「降り積もる寂寥感の中で芽吹く、安易だけど安心感ある群像劇」クーパー家の晩餐会 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
降り積もる寂寥感の中で芽吹く、安易だけど安心感ある群像劇
クリスマス・シーズンを背景に、ある人々の恋と人生と愛と絆を描く群像劇、というとどうしても「ラブ・アクチュアリー」を思い出してしまうが、この映画「クーパー家の晩餐会」により近いのは2005年の映画「NOEL-ノエル-」かもしれないと思う。アットホーム・コメディである一方で、どこかクリスマスに人々が抱える寂寥感を描き出しており、ホワイトクリスマスの温かさよりもしんしんと降りつもる雪の冷たさを感じるような気配がある。
群像劇の宿命かどうかわからないが、どうしても共感できるエピソードとしにくいエピソードとが出てくる。というか、目立つエピソードとそうでないエピソードと言い換えた方がいいかもしれない。結婚生活40年にして離婚を決意した夫婦が中心になってはいるものの、彼らはさほど目を引く力は持っていない。それよりも、老人と心の交流を持つ若きウェイトレスや、偽りの婚約者を連れてクリスマスに帰省しようとする女性、万引きで逮捕された中年女性と彼女を逮捕した黒人警官、といった彼らのエピソードの方がなんだか吸引力があって面白味がある。失業した中年男性やら、キスの下手なティーンエイジャーの初恋なんかがどうでもよく感じるのは観ている側のこちらの精神状態の問題だろうか?
正直なことろいうと、すべてのエピソードひとつひとつはそれほど旨い(上手という意味よりも旨みのあるという意味で)話でもない。いくつものストーリーを重ねることで誤魔化しているような、いくつものストーリーを重ねたことですべてが言い足りなくなったか、いずれにせよ、すべてにおいて浅ましい点は否めない。否めないのだけれど、なんかそんな小難しいことは脇に置いて、クリスマスの時期にちょっとほっこりあったかい気持ちになろうっていう気持ちで見れば、こういうホリデイ・ムービーって貴重だし、やっぱりいいよなぁって心から思う。
いっそ、すべてを同時進行で描くんじゃなくて、オムニバス映画として割り切って区別して描いても良かったかも。そうした方が一つ一つのエピソードをもっと丁寧に描けたし、連作短編小説を読むような感覚で一つ一つの物語を堪能できたかも?と思う。
ていうか、ダイアン・キートンとマリサ・トメイが姉妹、っていくらなんでも無理がありません?