劇場公開日 2016年9月9日

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「映像の素晴らしさと他の酷さが物凄い」キング・オブ・エジプト アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5映像の素晴らしさと他の酷さが物凄い

2016年9月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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3D 吹き替え版を鑑賞。まず,”Gods of Egypt” という原題なのになぜ「キング・オブ・エジプト」という邦題になったのか,非常に不可解だった。映像はほぼ全編が CG で,古代エジプトの風景を俯瞰するシーンなどは息を飲む迫力だったので,3D で見たのは正解だと思ったのだが,それも主人公カップルが登場するまでの僅かな時間に過ぎなかった。

脚本は,ご都合主義の権化のようなもので,まず物語には一切期待しない方が良い。最初の大規模な戦闘で,勝った方がとどめを刺しておけばその後の話は何も起きなかった訳で,何故生かしておいたのだろうと思って最後まで見たが,そんな話など最初からなかったかのようにスルーされていたのには目眩がするほどであった。本編中にも様々な約束事や決まりが出て来るのだが,次々と「〜と言ったな?あれは嘘だ」の連打には,もう開いた口が塞がらなかった。少年ジャンプで何十年か前に読んだマンガのような話だというような気がして,途中から物語を追いかけるのはほぼ断念して,映像を楽しむだけにすることにした。

役者は太陽神ラーをパイカリのバルボッサがやっていたのでくせ者感が物凄く,セトを演じていた俳優は悪役なのにかっこ良く,ホルスを演じていた俳優は正義の味方なのに悪役顔が残念だった。ヒロインはどこかで見たことがあると思ったら,マッドマックス怒りのデスロードに出ていた娘だった。印象がガラリと違って,見違えるほど大人びていたのは収穫だと思った。しかし,そういった評価点を全てご破算にしてくれたのが,吹き替えの棒読みの酷さである。主人公カップルがどちらも現役のアイドルで,何と吹き替え初挑戦だという話を聞いて,声優という仕事を舐め過ぎだろうと思った。さらに極めつけは終盤に出て来るスフィンクスの吹き替えが大相撲力士でエジプト出身の大砂嵐が演じていたことである。発音が不明瞭なのに余計なエフェクトをかけているので,肝心ななぞなぞの文章がほとんど聴き取れなかった。この吹き替えの責任者は一体何を考えているんだろう? ( ̄O ̄;)

音楽は素晴らしかった。担当していたのはスクリーム全作とダイ・ハードの最新2作などを手がけたマルコ・ベルトラミである。エジプトらしさも感じさせながらアクションに沿った曲作りのうまさには舌を巻いた。

演出にも脚本と同様の軽さしか感じられなかった。セトが他の神々の能力を奪って完全体を目指すというのもありがちだったし,完成したらどれほど強大になるのかと思ったのにあの結果にはホントに脱力させられた。スフィンクスの出すなぞなぞも,あの程度なら知恵の神トトなどに頼らずに答えられるのではないかと思った。神々や敵キャラのデザインに非常に既視感があったのだが,よく考えてみたら少年ジャンプの聖闘士星矢であった。話もあれだし,見た目だけが壮大なお伽噺とでも思って見るのが正解なのだろうと思った。
(映像5+脚本2+役者(声優)1+音楽5+演出4)×4= 52 点。

アラ古希