「デジタル監視社会への恐怖」スノーデン bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
デジタル監視社会への恐怖
デジタル化が進めば進むほど、人々の監視が強まる現代社会。2013年に、元CIA職員によって国家ぐるみの個人情報の監視実態を暴露した『スノーデン事件』を、史実を元にしながら、ドキュメンータリー・タッチで作り上げた社会派ドラマ。オリバー・ストーン監督が好みそうな題材であり、監視社会に鋭くメスを入れた作品とも言える。
日常生活で活用されるSNS、監視カメラ、ネット、パソコンを通して、アメリカ国家安全保障局によって、生活の全てがあからさまになっている実態。この実態を国民には知らせず、国家の上層部では当たり前の様に行われていることに、恐怖を覚える。本事件を通して、改善されたというものの、その実態は私たちの知るところではない。
監督のオリバー・ストーンは、本作を通して、社会に対しての強いメッセージ性と警鐘を鳴らしている。しかし、それだけでなく、映画作品として、スノーデン自身の生き方や恋愛観、自分の仕事に対する葛藤、そして危機が迫る緊迫感を盛り込む中で、エンタメ性もしっかりと盛り込んでいるのが流石である。
映画の中で「第3次世界大戦を押さえているの、こうした監視の成果だ」というセリフがあった。しかし、今まさに、ウクライナ情勢をはじめ、北朝鮮のミサイル挑発、中国の東アジア進出、等こうした大戦に結びつく火種は、あちこちに燻っている。互いが互いを牽制し、たてまえと本音が交錯する中で行われる国家交渉。果たして、「大戦を押さえている」という大義がまかり通るこうした世の中を、安心で安全な平和な時代と呼ぶことをできるのだろうか?
スノーデン役のジョセフ・ゴードン=レビットは、『スター・ウォーズ』をはじめ、多くの作品に出演しているバイプレーヤー。スノーデン自身にもよくに似ており、今回、主役の抜擢を受け、スノーデンの愛する人への思い、仕事への不信感、アメリカ国家への反逆など、心が揺れ動き、次第に変化していく、彼の内なる姿を演じている。