劇場公開日 2015年7月3日

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「リアリティなさすぎ」チャイルド44 森に消えた子供たち 島田庵さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0リアリティなさすぎ

2015年7月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

誰も知らないと思って、リアリティのない話をもっともらしくでっちあげてる感じ。

原作は、トム・ロブ・スミスの小説。
だがさらにその小説のもとになったのが、ロバート・カレンの「子供たちは森に消えた」というノンフィクション。
この本が、ハヤカワ文庫NFに入ってるんだが、どこも在庫がないみたいで、注文しないと手に入らない模様。
じゃあ原書(The Killer Department)はどうかなと思ったら、さらに入手困難みたい。

で。
もとになったノンフィクションと比べると、原作も結構「脚色」されてる。
まず年代は1980年代後半が1950年代に、
言い換えると、ゴルバチョフ登場前後がスターリン末期に
変えられてるし。
まだ若かった著者がどのくらい時代背景を研究したかはわからないが、
読んでいるとどうもかなりのステレオタイプ的認識があるようにみえる。

ところがさらに映画では、
その原作にさらなる改変を施し、
たとえば主人公レオの部下の幼い息子の死について、
原作は何も知らずに報告書だけ持ってその部下を訪ね、「息子は殺された」という反駁にあって初めて自分が持参した書類との矛盾に気づくのだけれど、
映画ではそもそも部下の自宅を訪問する前に遺体を見て、「殺人ではない、事故だ。そう納得させよ」という上司の命を受けてしまっている。

この改変により、「犯罪なき理想国家を掲げるスターリン政権では、殺人事件は国家の理念に反する」という惹句の意味は、少なくとも主人公レオの視点からは、全く異なってしまう。

いやそもそも、実際の事件が起こった80年代において問題だったのは、
犯罪捜査における自白偏重と
「下手な本音を言ったり余計な波風を立てたりすると損をする」という事なかれ主義であったらしいのである。
(ロバート・カレンの本が手に入ったらハッキリするんだが)
それを、原作者が妙な改変の仕方をし、映画がさらにヘンチクリンな改変を加えた結果、
え? いくら粛清のスターリン時代でも、なんかリアリティなさすぎじゃない?

他にも原作からの改変によってリアリティのなくなっているところ多数。

残念。

島田庵