64 ロクヨン 前編のレビュー・感想・評価
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原作を読まないと楽しめない
広報官と記者たちの掛け合いに迫力があれば・・・
原作が横山秀夫の長編傑作ミステリー「64」ということで、2008年に公開された横山秀夫原作「クライマーズ・ハイ」を思い浮かべる。なぜこの映画なのかというと主人公が大きな組織に所属し一つの大きな事件から逃れられない立場であることや上からも下からも責められ疑心暗鬼になる姿が瓜二つと似ている箇所が何個もある。「クライマーズ・ハイ」と比べると勝っているところが見つからないが、「64」も少なからず名作になる予感が少しは漂った前編だった。
昭和64年に起きた少女誘拐殺人事件が未解決のまま、平成14年まで時が過ぎた。当時事件を担当していた三上(佐藤浩市)は広報官として警察と記者の間でもがく日々を送っているが時効まで1年と迫った今、この未解決事件は思わぬ方向へと急展開をみせる。
原作の時点で興味深い点が早くも冒頭にあるのだが、この少女誘拐殺人事件は実際にあった話ではあるが、昭和64年には起こっていない。
そして1週間しかなかった64年にあえてこの事件をもってきた意図は天皇の死も関係している。当然1週間しかなかったということは天皇の死去が関係しているわけで、ここで注視されるのが報道の問題である。天皇死去と少女誘拐を天秤にかけた場合、前者が優先されるのは目に見えているわけだが、この選択が当事者である被害者や担当刑事たちには重荷になって今をむかえているわけである。更に言えば主人公の三上は広報官という立場であり記者との対立が絶えない日々を送っている。前の苦い経験があるからこそ同じ過ちを繰り返さないと秘めた誓いをたてている一方で大きな組織に在籍している以上、上からの指示は絶対という傲慢的な社会の中で自身の考えをどう打破していくかが前編の見所の一つ。
だが、この見所を活かしたとも言い難い緊張感のない演技がちらほら見られてしまったのが非常に勿体ない所。前編一番の山場であろう三上と記者である秋川(瑛太)たちが論争するシーンは特に安っぽいドラマを見せられているようで緊迫感が全く感じられない。気鋭の若手とベテラン俳優が一挙に出演していても配役が悪いとこうも作品全体のバランスが悪くなるのかと痛感させられた感じもした。
やや演技過剰?
砂の器を凌駕するかも知れない
こういう邦画と巡り会えた幸せを感じました。作成に携わった全ての人の、志の高い映画と思いました。
冒頭から、緊張感漂い、かつ美しい映像が、目を惹きつけます。もはや、ひと昔前になった昭和が、目の前に、生々しくその姿を見せてくれます。昭和天皇崩御と、誘拐された女の子の死が重厚に折重なり、一つの時代が終わった事と、それを終わらせたくない、ある意志が、ぶつかり合うドラマは、圧倒的な迫力を持っていました。
俳優の起用も見事で、リアリティのある社会派ドラマとなりました。佐藤浩市の存在感は見事で、逃げ場のないストレスフルな立場に耐える男の姿が痛ましい。だからこそ、そんな男が、それでも人を信じて戦う前編最後のシーンが、みんなの涙を誘うのだと思いました。後篇が早く見たくなりました。
後篇が、前篇のクオリティを保ってくれれば、この映画は、邦画史上に残るあの 砂の器と同等の、あるいはそれを凌駕する金字塔になるかも知れません。
後、約1ヶ月待つのは…
重厚なミステリーでした。
原作は、上巻を少しだけ読みました。原作に忠実で冒頭から一気に世界観に引き込まれて行きました。わずか1週間しかなかった昭和64年に起きた少女誘拐殺人事件、通称ロクヨン。事件に巻き込まれた娘を失い、後に妻まで失った男が事件に取り残されていている様子と記者とある問題をめぐり対立している様子などが描かれています。何しろ、日本映画を代表する豪華キャストに驚きました。それぞれが複雑な心情を抱えているキャラクターを見事に演じきっています。緊迫感があり、ハラハラドキドキしっぱなしだったので2時間がすぐでした。それにしても、佐藤さんの演技には驚きました。見応え十分です。すごくいい映画でした。続きがとても気になる作品です。
前後編にしたことで、ゆったり感が出てしまったかな…と、感じるところ...
後編がたのしみ
見ごたえは十分。ただ、三上が佐藤浩市っていうのはちょっと違うかなあ。
小説、NHK版ドラマ、どちらも知っていると、至る所に仕込まれた伏線が出てくるたびにドキッとしてくる。だから、単なるいち風景のように何気なく公衆電話を映してこられちゃハッとさせられてしまう。そして、電話帳を仏壇の下に押し込むところなんざ、何気なさそうでいて重要極まりない仕草だった。こういういくつかが最後に一つの線につながっていくのだなと思いながら見るだけで、映画を観ている至福感を味わえた。まさに、前編後編に分ける価値ありの内容。
だけど、演出としてはやはりHNK版のほうがよかったかなあ。あの、金属の歪む効果音と振り回されるようなカメラの映像は、観ているこちらをジリジリさせ、たどり着く終着点が見えてこない「64」にピッタリだったと思う。
各役者の演技も、素晴らしかった。今回の、蔵前が取材した銘川老人の人柄を紹介する場面には、泣けた。余計な説明のセリフもないのがいい。瑛太たちの悔しそうな表情が、何が正しいのかこだわるべきは何かを雄弁に語ってくれていた。
ただ、三上はやはりピエールだわ。佐藤浩市は素晴らしい役者だし、画面に緊張感をもたらしてくれていたが、いかんせん、「鬼瓦」ではないし、二渡と同級生に見えない。あの年齢(実年齢50代半ば)であれば、刑事一課長くらいのポストであるべき。40代の活きのいいキャストが望ましかった気がする。
とはいっても、見ごたえは十分。後編に期待できる出来だった。
家族を失う辛さ。次第に明かされる、切なくも許しがたい真相。
【賛否両論チェック】
賛:自らも傷を抱える主人公が、かつて家族を失った遺族の事件の真相を知るべく、孤軍奮闘する姿が印象深い。次第に暴かれていく警察側の隠ぺいや覇権争いにも、改めて考えさせられる。
否:登場人物が複雑に入り組むので、気をつけないと人物関係がついていけなくなりそう。後編に謎も残る。
自身も“家族の失踪”という苦悩に耐えながら、かつて少女を救えなかった事件の傷跡を埋めるべく、広報官という立場から奔走する主人公の姿が、非常に痛々しく映ります。クライマックスでの、記者クラブで啖呵を切るシーンなんかは、観ていて圧倒させられます。
そしてそんな彼が、無情にもその事件を利用しようとする警察上層部の覇権争いに巻き込まれていく様も、また切ないです。次第に明らかになっていく事件の裏側の真実にも、改めて考えさせられるものがあります。
それから本作では、何といってもキャストがとっても豪華です。ちょっとした役でも
「えー、この人!?」
ってなります(笑)。それくらい豪華な布陣にも注目です。
後半に向けて謎は残りますが、気になるグロシーンもありませんので、ミステリー好きな方には是非オススメです。
オールスターキャスト
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