「見ごたえは十分。ただ、三上が佐藤浩市っていうのはちょっと違うかなあ。」64 ロクヨン 前編 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
見ごたえは十分。ただ、三上が佐藤浩市っていうのはちょっと違うかなあ。
小説、NHK版ドラマ、どちらも知っていると、至る所に仕込まれた伏線が出てくるたびにドキッとしてくる。だから、単なるいち風景のように何気なく公衆電話を映してこられちゃハッとさせられてしまう。そして、電話帳を仏壇の下に押し込むところなんざ、何気なさそうでいて重要極まりない仕草だった。こういういくつかが最後に一つの線につながっていくのだなと思いながら見るだけで、映画を観ている至福感を味わえた。まさに、前編後編に分ける価値ありの内容。
だけど、演出としてはやはりHNK版のほうがよかったかなあ。あの、金属の歪む効果音と振り回されるようなカメラの映像は、観ているこちらをジリジリさせ、たどり着く終着点が見えてこない「64」にピッタリだったと思う。
各役者の演技も、素晴らしかった。今回の、蔵前が取材した銘川老人の人柄を紹介する場面には、泣けた。余計な説明のセリフもないのがいい。瑛太たちの悔しそうな表情が、何が正しいのかこだわるべきは何かを雄弁に語ってくれていた。
ただ、三上はやはりピエールだわ。佐藤浩市は素晴らしい役者だし、画面に緊張感をもたらしてくれていたが、いかんせん、「鬼瓦」ではないし、二渡と同級生に見えない。あの年齢(実年齢50代半ば)であれば、刑事一課長くらいのポストであるべき。40代の活きのいいキャストが望ましかった気がする。
とはいっても、見ごたえは十分。後編に期待できる出来だった。
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