真夜中のゆりかごのレビュー・感想・評価
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【”幼き我が子が揺り篭の中で、激しく泣いていた理由。”物語構成の秀逸さと、劇中屡々描かれる役者の怒り、哀しみ、狼狽を浮かべたドアップの眼が印象的な親子の愛情を問うサスペンスフルな作品。】
■妻のアナや生後間もない息子アレクサンダーと幸せな生活を送る刑事のアンドレアス(ニコライ・コスター=ワルドー)はある日、薬物依存の男女、トリスタンとアネが育児放棄した乳児、ソーフスを見つけ、衝撃を受ける。 どうすることもできず、無力感に苛まれるアンドレアス。 だが、愛息子のアレクサンダーが”突然死”した事から、アンドレアスは、我が子とソーフスを密かに入れ替える。 ◆感想<Caution!内容に触れています。> ・今作は、完全にデンマークの名匠スザンネ・ビア監督の鑑賞側への罠に引っ掛かった作品である。 ・まさか、アナがアレクサンダーを”揺り篭症候群”に至るまで、激しくあやしていたとは・・。 ー 確かに、序盤からアナの言動はオカシカッタ。- ・アネは警察の尋問にも”殺していない”と激しく抗議する。その際のアンドレアスを観る憎しみに満ちた目のアップ。 ・アンドレアスが、トリスタンを取り調べしている時に、言ってしまった言い間違い。”アレクサンダーを殺しただろ!”その後の、彼の狼狽する目のドアップ。 ー そして、同僚のシモンはそれに気づくのである。- <ラスト、刑事を辞めたアンドレアスが店で見かけた成長した男の子。驚きの眼で観る彼が効いた言葉。”名前は、なんていうの?””ソーフスだよ、大丈夫オジサン。” アンドレアスが勝手に、育児不能者と決めつけていたサネは、キチンと母親として、ソーフスを育てていたのだ。 今作は、緊迫感溢れる物語の中で、親子の愛情を問うサスペンスなのである。>
タイトルなし
警官の子供が死んでしまい、妻の子への喪失感から犯罪者夫婦から子供を盗んでしまう話。そのまま育てられても、幸せにはなれないだろうが人の子を盗んで喪失感を埋め合わすことができるのだろうか。妻も自殺してしまい、結局は妻が虐待死させてた訳で警官主人公が犯罪に手を染めて、職も失ってしまったのが何ともやるせない。ラストは数年後イメージだろうが主人公も多少髪型変えるなど経年感を感じさせないとと思った。
ビア監督独特の目のドアップは健在
仮釈放中でも管轄外。福祉局にも連絡できないまま、放置されて糞尿まみれだった赤子が不憫でならなかったアンドレアス。そんなある日、夜中に死んでしまった自分の子アレクサンダー。妻のアナ(ボネヴィー)は「救急車を呼ばないで!」と錯乱状態。夜中にトリスタンのアパートに忍び込んだのは困ったアンドレアスの究極の選択だった。他人の子を育てなければならない罪悪感と葛藤が続く。
一方のトリスタンは自分の子が死んだと慌てふためく。しかし、虐待死によって自分が逮捕されることを恐れた彼は死亡事実も届けない。そこで散歩中に幼子ソーフスを誘拐されたという芝居をうってでたのだ。
しばらくして、アナは夜中に家を飛び出し、赤子をトラック運転手に預けて川へ身投げしてしまうという予想外の展開。奇しくもアンドレアスは一人で赤子を育てることになってしまう。
やがてトリスタンが埋めた幼子の遺体が見つかる。監察医の所見によると死因はゆさぶり症候群によるもの。医者はあきらかに殺人ねと言う・・・あ、アナのせいだったのか・・・
トリスタンへの尋問でアンドレアスはふと「アレクサンダーは?」と聞いてしまったことを同僚刑事のシモンが思い出した。アンドレアスが実はソーフスを育てていたことを彼の態度や写真を見比べてみて気付いてしまったのだ。そしてシモンの勧めでアンドレアスはサネのもとへ子供を返す・・・
数年後、刑事の職を失ったアンドレアスはホームセンターで働いていた。そこへ客としてやってきたサネとソーフス。子どもを返して正解だった!と納得して笑顔になるアンドレアス。
我が国でも子供の虐待死が社会問題にもなっているが、北欧でもいっしょなんだなと感じる。夫としてはアナの狂気になるまでの愛と、ヤク中から幼子を守る意味でソーフスを育てようと試みたのだが、アナが自殺してからは意味がなくなってしまった。また、夫に比べ、サネがまともな母親であることに気付いたんでしょうね・・・
ビア監督独特の目のドアップは健在。無邪気な子供もそうだが、アンドレアスの心理描写がよく撮れている。
分かってないのは自分 結局し
男だね。相方の話を聞き、相方を守ることに全身全霊。のつもりが、まったく相方を理解できておらず、自分の価値観の押しつけになってしまう。 分かってないのは自分。このことに気づくのは難しいですね。
今を生きる我々へ
アカデミー外国語映画賞を受賞した2010年のデンマーク映画『未来を生きる君たちへ』のスサンネ・ビア監督の2014年の作品。
『未来を生きる君たちへ』は正直うろ覚えなのだが、こちらはそうそう忘れ難い。
美しい妻と産まれたばかりの乳児と共に湖畔の家で幸せに暮らす刑事のアンドレアス。
通報を受け、ヤク中カップルの劣悪な育児放棄の場を目の当たりにし、憤りを感じる。
そんな彼にある悲劇が起こり、さらにその悲劇は連鎖していく事に…。
ある朝、愛する我が子が突然死亡。
妻はパニック状態に。
アンドレアスもショックの中現実を受け入れ、してはならない事に手を出す。
ヤク中カップルの一室に忍び入り、死んだ我が子(アレクサンダー)と彼らの乳児(ソーフス)をすり替える。
家に連れ帰るが…、妻は戸惑いを隠せない。
アンドレアスは自分の行いを肯定する。我が子は死に、この乳児もあのヤク中カップルの元に居たらいずれ死ぬ。ならば…。
一方、ヤク中カップルは…
男は激しく狼狽。
が、女は赤ん坊の遺体を見て、我が子ではないと確信する。こんな母親でもやはり母親なのか…?
またムショに戻りたくない男は赤ん坊の遺体を森に埋め、誘拐されたとひと芝居。
嘘だと知ってるアンドレアスは激しく問い詰める。しかし、他人の子を連れ去っといて、どの口が言う!?
ようやくソーフスを育てようと決めた妻。その矢先、橋から身を投げる。
まさかの悲劇。我が子を失い、今度は妻までも…。
ヤク中男が森に埋めたアレクサンダーの遺体が見つかる。
検死の結果、衝撃の事実。
虐待死。
妻は我が子を虐待し、それ故の死亡だったのだ…。
夜泣きなど自分も育児に協力していたとは言え、妻はさらにもっと。その心労に気付いてやれなかった。
知りたくなかった妻の虐待。理想的だと思っていた自分の家庭は知らぬ所で崩壊していた。
子供を育てる事すら出来ないと思っていたヤク中女。我が子は生きていると信じ続け、男が逮捕された今、真っ当な母親に…。
ソーフスにとって何がいいのか。母親の元に戻るべきか、施設に預けるべきか。
アンドレアスのした事は勿論、罪。…が、少なからず分からんでもない。時に血の繋がりより他人の温もりの方が…。
何が善で、何が悪か。見方、立場によって、それは曖昧。
しかし、ラストの“再会”に心が救われた。
良き母
世界的に男女平等率が高く、高福祉国家であるデンマークの作品ですが、子育てってそう一筋縄ではいかないのだと実感しました。男女平等率が高い国だろうが、「良き母」という社会通念そのものが、女性を苦しめるのは全世界に共通なのではないでしょうか。
作品に出てくるふたりの母親は、そんな社会通念に苦しめられている様に感じました。逆にふたりの父親は、彼女達の苦しみの本質を汲みとれません。いまだに、女性が生きにくい男性中心社会への批判に感じましたが、男性はどう感じたのでしょうか。スサンネ・ビアは、やはり鋭い監督だと思います。
虐待、ネグレクト、親の愛情とは?
薬物中毒、育児放棄の夫婦の部屋にいた赤ちゃんの悲惨な状況に心が痛む。
アンドレアスは自分の家庭は何も問題なく、幸せだと思っていたけど、奥さんは育児に悩んで赤ちゃんを虐待していた。この段階で気付いてあげればよかったのに。奥さんも打ち明ければよかったのに。
赤ちゃんが死んでしまった時の錯乱は悲しみもあっただろうけど、自分の虐待がバレてしまうことを隠したいためだったとは。
薬物中毒でネグレクトでも、さすがに自分の子供がすり替えられたことには気が付いて、母の愛を感じることができて少しホッとした。
ラストで成長した子供と立ち直った母親が一緒に買い物しているシーンで救われた。
スサンネ・ビアさんファンになりました
個人評価:4.0 2組の夫婦の生活と子育てを対比させ物語が進み、双方の幼子が辿る結末が、あまりにも皮肉を帯びており、悲しみでいっぱいになる。 見る側がどの役柄に感情移入させるかで見方も様々と言える程、各キャラクターの心理描写や、行動が細かく描かれ、監督の力量が感じられる。
心に突き刺さる
9ヶ月の子の子育てど真ん中で、この作品を見ると、本当に心に突き刺さります。 全ての描写が厳しく、当分はこの作品に悩まされそうです。 どのシーンも痛いのです。 キングスレイヤーやはりイかれてた笑 あの特捜部Qの刑事がこんな犯罪者になるなんて笑 思わぬキャスティング嬉しかった。
痛烈な『男は結局わかってない!』ドラマ。
サスペンスと呼べる作品ではない。 幸せで愛に溢れる家庭なのに、どこか陰鬱な一面を見せる妻。恐らく表面的なところだけしか見てない夫。 ジャンキー夫婦のうんこまみれでトイレの床に放置される赤ちゃんを見せられたら、主人公の取る行動は正義と言われても私は頷いてしまうし、その後の行動にも同情する。サネ達に育てられてたら、絶対どこかで死んでいただろうと…。 けれども、夫の取った行動は妻のためともあれどやっぱり分かってない、そうじゃない。奥さんの異様な空気をちゃんと見てくれ〜!ちゃんと話してくれ!と終始思ってしまうわけで。 愛も優しさも持っていても、それは正義や理解とは似て非なるものなんだと痛烈に訴えかけてくるドラマだと思う。
劣悪な環境と幸せな環境
ジャンキー夫婦の赤ちゃんは子育てには衛生的にも不向きな環境だが母親には愛されて。 刑事の赤ちゃんは不自由のない幸せな環境で母親には愛されず。 赤ちゃんをすり替えるシーンの雑な演出に冷めストーリー自体にハマれず誰にも感情移入出来ず映画のLOOKも地味でTVドラマ感が。 もっと巧く演出が出来ないモンか?
わかるんだけど
スザンネ・ビア作品にはテーマにとても共感する。本作は母性と父性の違いと子育てに対するスタンスを取り上げているので期待していた。 子供を産んだ女性だからといって、恵まれた環境だからといって、子供に100%向き合えるわけでもなく、個人や社会の責任をも問うているが、型にはまった対比がありきたりだった。 また、ビアの「あれもこれも言いたい」という表現が、やや散漫な印象にってしまっているように感じる。
女性不信者には、要注意…
煽りの「サスペンス」は期待ハズレの一本。 ただし、物語的には考えるところの多い作品。 「ゴーン・ガール」とは違った切り口で、家庭を作ることに恐怖を覚えさせる作品よ、コレは… 子供は大切、でもそれを育てる…家庭を任せる人間がど阿呆だったら? そして思いやりの名の下に、其処に対する人間もまた阿呆だったら? 両極端を切り取り、極端を描いた作品。 子供は欲しいけれど、もういいや…と後押しされたよ…涙
嗚呼、びっくり!
『真夜中のゆりかご』鑑賞。大好きなS.ビア監督作、いやはや、もうあっぱれ!様々な現代社会問題を盛り込んだサスペンス。これでもかと次々思わぬ展開に進み、いちいちびっくりして声を上げそうになった。悲しく胸が苦しくなったけど、ふわりと温かくさせるラストに涙が溢れた。
善意欠く行動は悪しき結果を招くという映画
物語の展開としては、予期せぬ方向に進んでいくので関心はあるものの、ちょっとなんだか頭で拵えすぎた感はぬぐえない。 スザンネ・ビア監督は、たぶん、子どもを持つ父・母の感情を掘り下げることより、悪意ある(善意のない、と言い換えた方が適切か) 行動が、玉突きのように悪しき方向へと進んでいくことを描きたかったのだろう。 まぁ、これは前々作『未来を生きる君たちへ』からの連想なんだけれど。 なので、サスペンス映画としてはそこそこ、ドラマとしては食い足りない、といった出来栄えかしらん。
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