「家族と自分の幸せへ捧ぐ歌」幸せをつかむ歌 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
家族と自分の幸せへ捧ぐ歌
この歳になってもパンクな格好でロックを歌う。
そんな役でもこなしてしまうのがメリル・ストリープの凄い所。
が、演じたリンダ。通称“リッキー”。ロック歌手として成功を収め、順風満帆とは程遠い。
週末のライブハウスで歌う程度。普段は専らスーパーでレジ打ちのパート。生活は困窮。
ロック歌手になる為に家族を捨てた過去あり。
夢破れ、いい歳して人生どん底…。
そんな彼女に思わぬ連絡。元夫ピートから。二人の実娘ジュリーが離婚で精神不安定に。現妻は親の介護で実家を離れられず、男親では手に負えない。困って困って、手を貸して欲しい。
かくして久しぶりに一度は捨てた家族と再会するのだが…。
元妻に協力を乞う元夫も元夫だが、親らしい事を何一つしてこなかったリッキーには荷が重すぎる。
とは言え、元は家族。心配して力になろうとするのだが…。
案の定娘は断固拒絶。リッキーもいざ対すると優しい親の振る舞いは出来ず。
息子らも呼んで久々に“元”家族が集ったディナーもぎくしゃく。今度結婚する息子の式には招待されず。と言うか、今初めて知った。
そのパンクな格好も今更母親面も完全なる場違い。戻ってきたのも自分がバカだった…?
ある時、ジュリーの元夫とばったり出くわす。ジュリーがまた精神不安定になる中、ピートと二人で娘に代わってガツン!と言ってやる。
ピートともその後ちょっといい雰囲気に…。
あんなにぎくしゃくしてたのに、家族って分からないもんだ。
リッキーはこの時、再び妻/母として何かを期待したのかな…?
その期待は脆くも崩れる。ピートの現妻が戻ってきた。
自分とは違う良妻賢母。意気消沈から言い合いになり、去る…。
しかしその直後、現妻から謝罪の連絡があり、息子の結婚式への招待。
行ける訳がない。が、バンドメンバーで現恋人の背中押しで。
式に出席するも、周囲の視線がチクチク。
それでもリッキーは家族へ、自分だけにしか歌えない歌を歌う。
オスカー監督ジョナサン・デミ(本作が遺作)とオスカー名女優メリルのコンビながら、話も作品自体も至って平凡。
ちょっとご都合主義な気もする。(脚本もオスカー脚本家ディアブロ・コーディだ)
でも、ぎくしゃくや絶たれたと思われた関係からの和解、受け入れ、交流はハートフルだ。
メリルの歌唱力(『マンマ・ミーア!』の時よりいい)やギター演奏はさすが。
ジュリー役はメリルの実娘メイミー・ガマー。魅力的かどうかはさておき、妙なリアリティー。
クライマックスの歌は高揚感満点。
家族と自分の幸せへ捧ぐ歌。