「心のふた。」海のふた ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
心のふた。
年中営業で一気に季節感が失われたなぁ~と個人的に思うのが、
鯛焼きとかき氷のブームだ。鯛焼きといえば寒い冬に、かき氷と
いえば縁日や真夏に食べるもの。そんな時代に育った私はどうも
今のブームについていけてない。今作の中でも「冬はどうするんだ」
と聞いてくる元彼に対し、まりが「真冬に暖かい部屋の中で食べる
かき氷は最高に美味しいんだから」みたいなことを言うけど、確かに
アイスも美味しいのは分かる。だが海辺の町でそれを専門でやって
一年もつんだろうか?と、どう考えても彼の言い分の方が正しい。
よしもとばななの原作はミュージシャンの曲にインスパイアされた
ものらしいが(未読)、どうりで不思議感漂うファンタジーのような
世界観。しかし生きていくという現実面においては否応なく自立→
変化が求められており、それに逞しく挑む女性二人がいじらしい。
ロケ地は西伊豆の土肥。旅行で訪れたことがあるので景色におぉ!
と思う部分があった。とてもいいところで楽しかったが、やはり
観光で遊べるのと、そこで暮らすのとでは大きく違うのが分かる。
元彼が頑張って店を立て直そうとしても上手くいかなかった現実。
はじめちゃんが心の傷を癒しながら、まりや周囲の傷にも対応し、
大切なものを残して去っていく姿。かき氷屋のファンタジーとは
また違う意味で現実を見せてくれた。夢を叶えるべく奮闘するまり
は、主演の菊池の雰囲気と相まっていじらしいが、こだわりを推進
するあまり、子供達から嫌われる^^;自分が子供の頃からかき氷が
好きだったというのならその子供時代に何が食べたかったかを想い
返せばいいのだ。単純に喜ばれる味わいが続いてきたのは、奇を
衒わない愛着が子供の心に息衝いてきたからじゃないんだろうか。
因みに最近のかき氷はまるでジェラートのようにフワフワなのだが、
昔のかき氷(今でも安いのはそうだ)はガリガリしてジャリジャリで、
舌を真赤にしてみんなでベーっと見せ合ったりするのが楽しかった。
(ラストにほっこり気持ちが温まる。糖蜜のかき氷を食べてみたいな)