劇場公開日 2015年7月18日

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海のふた : インタビュー

2015年7月17日更新

菊池亜希子、「海のふた」で過ごした三根梓とのひと時

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よしもとばなな氏の小説を実写化した「海のふた」が公開となる。東京から帰郷し、かき氷屋を始める主人公・まりを演じた菊池亜希子と、まりの家に身を寄せる顔と心に傷を負ったはじめ役の三根梓。年が少し離れていて、長い時間を共に過ごしたわけでもないがなぜか理解し合える――劇中そのままの関係の2人に話を聞いた。(取材・文・写真/黒豆直樹)

あらすじからは、都会で疲れた女性が田舎で好きなことを始め、周囲を笑顔に…という“キレイな”物語を想像してしまうが、菊池ははっきりと否定する。都会での挫折、地方の暮らしの難しさ、好きなことをして生きる苦しさが、美しい情景の中で残酷に浮き彫りになる。

菊池は「私自身、まりのような人生の選択をしていた可能性もあるし、周りの友達が踏ん張って生きている姿もすぐそばで見ている」と語り、共感にとどまらない胸の内を語る。

「大学時代、周りが『好きなことを仕事に選んじゃダメだよ』と分かったように言うのに疑問を感じていました。でも一方で、軽はずみな『いつか田舎でカフェをやりたいんだよね』というような願望に対し『そんな甘くない』という意見も理解できるんです。ただ、まりが好きなことを選んで生きるのを決意したのは尊いことで、応援したい。割り切って現実と折り合いをつけて生きるのが真っ当なのかもしれないけど、諦めたくないし、その努力は非難も軽蔑もできない。ふと原点に立ち戻って、自分が何を好きだったのかを思い出せる、そんな物語だなと思います」。

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「海のふた」とは、インディーズ系ミュージシャン、原マスミの名曲のタイトルだが、三根は劇中の海に入るシーンでその意味を実感したという。「生きているとつらいこともあるけど、きちんと向き合い、受け止めて一歩前に踏み出せた時、ふたが閉まるのかなと思いました。海に浮かぶと一瞬だけど、自分の中が澄んでリセットされたように感じることがあるんです」と振り返る。

そんな三根の言葉が「いま、ストンと胸に落ちてきました」と微笑む菊池。まりとはじめの関係を「まだギリギリ、子どもでいられる“最後の思春期の2人”」と表現し「特別に仲が良くて長い時間を過ごしたわけでも、多くを語り合ったわけでもないけど理解し合える。女の子にはそういう関係ってあるんです」と語る。

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すると今度は三根が菊池の言葉に同調する。「一見、体育会系のまりと繊細そうなはじめちゃんで正反対に見えるけど、勘ぐったりせず、素朴にありのままを見ている。そんな2人だから心の深いところでつながり合えたんだと思います。この距離感が心地よかったです」。

まりとはじめの言葉は、感情をどこかに置き忘れたように淡々と、何でもないことのように発せられるのに、波のように心に深く沁みこんでいく。菊池が「適当に言っているような言葉こそが、実はまりの本質であったり、全てだったりする」と言えば、三根も「訥々と話す中にはじめらしさがある」と語る。静かな情景の中でポツリポツリと交わされる会話。その裏にある激情に心を傾けてほしい。

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