チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密のレビュー・感想・評価
全6件を表示
邦題は残念だが素晴らしい作品
個人評価:4.0
アメリカの是枝裕和。
物語を描くのではなく、人間や家族をテーマに作品を作る監督。本作もマイノリティな人物を描き、人間をテーマとしていると感じる。
リアルな人物描写と会話劇で、より身近に感じ登場人物を感じる事ができる。
お金と善意の対比から始まった老婆との関係と、最後に描写される老婆の秘密。その秘密にはまだ私は辿り着けなかったが、とても心に残る作品。
観客に想像を託す作品
評価も悪くなさそうだし、チワワ好きだしなんとなく観てみた作品。
原題はstarlet.
チワワの名前でもあり“未来のスターとして宣伝される女優”の意もあり。
おばあさんが、チワワの名前を聞いて「男の子なのに?」というセリフがあったから、きっとそういう意を含んでいるんだろうなぁ、と観終わって思う。
今の生活(状態)に嫌気がさして、自分の部屋を模様替えしようと、ガレージセールで小物やらを探す主人公はそこそこ売れているポルノ女優。
たまたまそこで花瓶として使おうと買ったサーモスに何と大金が入っていて。
確認しに行くが、どうやら持ち主のおばあさんは全く気づいていないらしい。
気ままにお洋服を買ったりショッピングもしてみるが、やはり気が咎めるようで、単なる親切を装っておばあさんの手伝いを始める。
最初は不審がっていたおばあさんだけれど、ふたりは次第に心を通わせて、仲の良い“友達”のような関係に。
旦那さんを亡くし独り身のおばあさん。
同居している同じくポルノ女優の友達は薬漬けで、会社の規則上彼氏もつくれない孤独な主人公。
お互いにぽっかり空いている溝を埋めあっているよう。
ある時、おばあさんの夢であるパリに連れて行ってあげようとサーモスに入っていたお金の残りを全てつかってチケットやらホテルを手配。
ふたりで楽しみにしていたパリ旅行。
その直前に、主人公の同居の女がおばあさんに「彼女はお金を盗んで、その罪悪感だけで世話をしている」と告げ口。
おばあさんはショックでパリ行きを断念しようとするが…行くことに。
その空港に向かう途中で、いつもの旦那さんのお墓に寄るよう主人公に伝え。
主人公に花を添えてきてと伝える。
そので初めて知った事実。
子どもはいないと言っていたけれど、旦那さんと一緒に亡くなっていたのだ。
その事実がカミングアウトされてエンディング。
チワワのstarletをおばあさんに預けている間に何があったのだろうか。
ただの脱走ではなく、おばあさんは何か酷く辛いこと?嫌なこと?があったはずだけれど、それについては触れていなかったり…
結局おばあさんの家族はなんで亡くなってしまったのかも気になるところ…
観る人にいろいろと想像させる作品だった。
見返りを求めない
アイドルとかセクシー女優に深い思い入れをもつ人のことを、少し理解できたように思う。
それは彼女らの献身性に心をうたれるからなのではないか。
見ず知らずの人間の好奇や妄想や性欲の対象となりながら、嫌な表情ひとつ見せることなく、まるで自分一人のためだけに存在しているかのように振る舞う。
人と心がつながりたくても思うようにならず、孤独な心を癒したり誤魔化したりするための方法が多様化した現代にあって、彼女たちはまさしく女神なのだ。
ドリー・ヘミングウェイ(あの文豪ヘミングウェイの曾孫らしい!)演じるポルノ女優は、まさにそのことにかけて、男性はおろか、人生をむなしく生きる老女の心まで掴んでしまう天才的な献身性を見せる。
ほとんど見返りを求めないその姿は、同居する強欲で自己中心的な女優によって、いっそう光り輝く。
それにしてもひどい邦題だと思う。
原題はstarlet。主人公が飼っているチワワの名前である。
そのチワワは、終盤、飼い主の心が静かに波打つ原因を見ていないのだから。
邦題が、作品のテーマや雰囲気、全ての面において嘘をついている。
魔法瓶と罪悪感
健やかに逞しい女性像を可愛さもありつつ魅力的に描くショーン・ベイカーの手腕。
まぁ「タンジェリン」は女性?特殊なヒロイン二人ではあるが。
老婆と心を通わせる関係性を中心に周りが個性的なキャラだったり興奮するような描写など飽きがこない映像で楽しませてくれる。
非常識な言動に行動ばかりの同居人は最後まで意地汚いけれど金を取らなかったのには少し関心!?
度が過ぎたような行動にビックリもするが根はシッカリ者で強い女性像をキュートに演じたヘミングウェイの孫ってまたビックリ!!
チワワ逃亡で途方に暮れて涙するお婆ちゃんの姿に可愛さが溢れ癒される。
今や「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」で認知されているショーン・ベイカーでもあり、当時は無名だったからこその邦題だとは思うがあまりにもセンスがない、殺人事件とか陳腐なサスペンス映画をイメージしてしまう酷さ加減。
まんま、チワワの名前に直すベシ!?
ドリーヘミングウェイ
ショーンベイカー監督。ホットパンツ、ボクサーパンツ姿でガリガリで手足の長いドリーが素晴らしい。所謂ケイトモス系なのだけれど、ポルノスタジオのカットは多分ボディダブルなのだけれど、これにボカシを入れてしまうリアルろくでなし子的な文化度の低さが恥ずかしくなる。美しき諍い女には別にボカシを入れても入れなくてもどちらでも良いけれど、チワワは見ていたには断固入れるべきではない。ドリーはまるでinto the wildのクリステンスチュアートのよう。やたらとコスチュームがかっこいい。おまけに音も良くて、赤のマスタングに青のボロい86みたいなスポーツカーとか車が、キマッてるし、車の中にいるドリーのショットがやたら素晴らしい。もちろんおばあちゃんもチワワも赤毛にしちゃう同居人もみな素晴らしい。ショーンベイカーはまるでフィンチャーというかクレイグブリューワーみたいというか、ジョナサンデミっぽくもあり、MTVを完全に昇華した感じ。netflixのスタテンアイランドサマー?がすごく見たい。あとtangerine。こういう映画を撮れるアメリカはというかアメリカ映画はやはり凄く豊かだ。2010年代の映画の最前線だと思う。
全6件を表示