「こんな夢見る職場は日本全国どこにも無い」マイ・インターン 全竜(3代目)さんの映画レビュー(感想・評価)
こんな夢見る職場は日本全国どこにも無い
ネット通販を主戦場に急成長した衣料販売・デザイン会社が募集していた高齢者見習い職員、云わゆるインターン枠に興味を示し、採用された老紳士が、女手一代で砦を築いた女社長の相談役兼運転手として厳しいネットビジネス界を二人三脚で切り開いていくサラリーマン(?)喜劇。
ベテラン新人社員(?)に大御所ロバート・デニーロ、
多忙で仕事に振り回される女社長にハリウッド屈指のミューズ、アン・ハサウエィと云う歳の差40以上の異色コンビが注目を集めた。
一方、CMが劇場のロビーで「サイコーでした!」「感動しました!」って客が胡散臭いコメントでヨイショする例の目障りなスタイルだったので、端からスルーしていた作品でもある。
第一、私はアン社長の前日譚にあたる『プラダを着た悪魔』すら観ていない。
しかし、巷の映画批評コミュでの評判の良さと、会社の映画好きの女上司に薦められたのを機に、相変わらず現金な心持ちで劇場へ向かった。
感想はってぇっと、癒される物語やったけど、《良くも悪くも理想的過ぎるお爺様&キュート過ぎる女社長》の奏でるお伽噺である。
シャバで散々モマレた経験上、あんなに物分かりの良い爺様も若くて人情家の美人起業家も地球上に存在するワケが無い。
冷静に考えてごらんなさいよ。
どんどん拡大され山積みとなる仕事と、常に触れ合いを乞う家族との両立を夢見るものの、容赦なく押し寄せる責任と使命に押し潰されそうな毎日に、嫌な顔せず愚痴に耳を傾け、豊富なノウハウを基に的確なアドバイスを押し付けがましくなく提示し、尚且つ、育児にも積極的に手伝ってくれる。
そんな神様みたいな人が一体何処にいるってぇんだ!?
もし、実在するならば、其の人自体が立派な社長になってらぁ。
または、とっくに過労死している。
っと、メール削除騒動辺りから、客観的な視点が濃くなっていた。
etc. etc.
冷静に考えなくても解りそうな事やけど、共感を得てヒットしている現状は、如何に現代社会の仕事場がストレスの海で、皆、救いの手を求めているかってぇ事なのだとテキトー社員の私なりに思う。
つまり、どんなに過酷な労働環境でも、相談に乗ってくれる人が一人でも居てくれたらどんなに助かるかと云う会社員の憧れが、銀幕に掛けられ、形となり、観る者を惹き付けていくのだと考察する。
これまで、『タクシードライバー』『ゴッドファーザーPART2』『アンタッチャブル』etc. 非カタギ系のアブない男が似合う名優の頂点ロバート・デニーロが屈託の無い笑顔を社内に振り撒くムードメーカーに徹する意外性が、また心をくすぐるのだろう。
せっかちな社長&出世とは無縁の平社員との不思議な絆は、『釣りバカ日誌』に通ずる距離感である。
云わば、アン・ハサウエィ社長がスーさんで、部下のロバート・デニーロはハマちゃんに当てはまると説くのは強引過ぎるだろうか?
日本でリメイクするならば、デニーロは西田敏行で、アン社長は米倉涼子か、はたまた綾瀬はるかも興味深い、それとも。。。
と、キャスティングを妄想すると、退屈だった物語が途端に面白くなってきたから、やはり現金な了見である。
要するに、映画も会社も楽しむコツは現実逃避なのだ。
コレに尽きるね♪
と、改めて実感した気楽な晩秋の午後に、最後に短歌を一首
『荒波に 枯れぬハンカチ 乗す船出 手向けし笑みは 戦士をほぐす』
by全竜