「私の部下は先輩」マイ・インターン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
私の部下は先輩
公開時から散々、元気を貰えるストーリーだとか、アン・ハサウェイ可愛いとか、デ・ニーロ素敵とか言われてたけど、重ねる言葉も無い。
好編!!
出来すぎだとか予定調和だとかそう言った映画的見方を無視すれば、本作を悪く言うひねくれ者はそう居ないだろう。
毎回毎回手掛けた作品の人気が高いナンシー・メイヤーズ、今回も手堅い!
以前、年齢差の壁が無い職場で働いていた。
新しく出来たばかりの会社で、自分は初期メンバーの方。
それから続々と新入社員が入ってきて、下は20歳、上は60近くまで。
その“後輩”である年配者の方々が、皆、いい人たちばかり。
俺はお前らより長く生きて長く仕事してきたんだぞ!…なんてそんな態度は微塵も見せず、分別わきまえ腰低く、親切でフレンドリーで若い奴らよりエネルギッシュ。
そして居てくれると何だか安心する。
だから見ていて、ジュールスの気持ちがよく分かる。
その会社は最初は勢いあったが、あっという間に右肩下がりになり、現場の事なんか何も分かってない無能なお偉方の方針に納得出来ず、自分も含め大勢が1年半ほどで辞めてしまったが、あれから数年経つのに、年齢差を超えた交流は今も続いている。
仕事の魅力に、その仕事内容そのものと同時に、気心知れた人間関係もある。
…何だかちょっと脱線してしまったが、本題戻ります。
ジュールスにとってベンの存在はかけがえのないもの。
毎日毎日、殺人的忙しさ。
家に帰っても家族の時間はほとんど無く、気の休まる暇も無い。
別にベンがその全てを受け止め、癒してくれる訳ではない。
でしゃばらず、気付いた時に気になった事をやってくれ、必要な時アドバイスをくれる。
自分じゃ手の届かない部分を補ってくれる、必要不可欠な縁の下の力持ち。
こういう存在ってホント、温かくじんわり身に染みる。
やっぱりどうしても、二人の魅力を言わずにいられない。
“プラダを着た悪魔のアシスタント”から今度は自分が“プラダを着た悪魔”に。
バリバリのキャリアウーマンで若社長のアン・ハサウェイが魅力的。
彼女が着こなすファッションの数々が、男の目から見てもいちいちカッコイイ。
その一方で、弱い一面も…たまらなく男心をキュンとさせる。
本作の原動力であろうロバート・デ・ニーロ。
「タクシー・ドライバー」「ディア・ハンター」「レイジング・ブル」…数々の名作で見せた伝説的な名演から思うと、本作でのほっこり笑顔は何処でこうなったか…、とちょっと思わずにはいられないけど、そこは名優、素敵な存在感で魅了する。
(確かにここずっとの軽い役柄はガッカリする時もあるが、本作は当たり。今アメリカで公開してる「Dirty Grandpa」なんてチラッと見ただけでも辟易)
ベンが余りにも理想的過ぎるけど、不思議と許しちゃう。
仕事も出来て、プライベートの相談も聞いてくれて、前向きで、的確な助言、行動。
そりゃ人気者になるって!
年配者が今時の仕事を始める。
仕事に歳は関係ない、古いやり方がいい、今のやり方はよう分からんとか、そういう偏見無い描かれ方に好感。
若い女性がたった一人で立ち上げ大きくした会社。難題にぶち当たったり、仕事に没頭するあまり家庭では…と、女性が働く社会の矛盾もチクリと刺す。
最後のジュールスの決断は、人によっては賛否分かれそうな気もするが、自分で下した答え。
自分で築き上げた財産が大きければ大きいほど、負担も重い。
でも、今までもそれでやって来た。信じてついてきてくれる仲間が居るから。
もうどうしてもいっぱいいっぱいになった時、これからは素敵な“部下の先輩”が居る。
ずっと走りっぱなし…いや、これからも走り続ける上司の若者に、部下の年長者は立ち止まれ、とは言わない。
深呼吸して、と諭してくれる。