「新しき傑作…にはならず」皇帝のために 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
新しき傑作…にはならず
2014年の韓国ノワール。
野球賭博に関わり逮捕され、球界を追放されたファン。ある日ヤクザ連中といざこざを起こすが、それがきっかけで釜山最大ヤクザ組織“皇帝キャピタル”の代表サンハに気に入られ、裏社会で生きていく事に…。
失うものなどもう何も無いファン。
ならば、成すままに。
ヤクザ連中には因縁付けられ、
情婦と密かに関係を持ち、
サンハは勿論、組織の会長にも興味を持たれる。
腕っぷしが強く度胸もあり、頭も切れる。
みるみる頭角を現していく…。
つまらなくはない。つまらなくはないのだが…、いまいちインパクトに欠けた。
こういうアウトサイダーが裏社会の中でのし上がっていく様は、傑作『新しき世界』があったが、あちらに遠く及ばず。あちらは潜入捜査モノで、それに比較するのもこちらにとっては酷だが。
韓国ノワール十八番のバイオレンスや結構濃密なラブシーン。
でもこれ、平凡なストーリーや演出を埋め合わせているような気がした。
それでもアクションも『アジョシ』などにも及ばず。
唯一ラブシーンは、相手のパイオツを惜し気もなく見せ、ご馳走様だったけど。ボカシ入りだったけど。
キャラの魅力も今一つ薄い。
一見カッコいい“漢”のファンだが、どうもこう後一つ魅力に欠けるのだ。
裏社会で生きなくてはならなくなった決断、のし上がりながらもその悲哀、せっかく元野球選手でありながらそれらの描写は皆無と言っていいくらいで、描き不足感が。
『新しき世界』のファン・ジョンミン兄貴がそうであったように、こういう作品の場合、主人公の後ろ楯になるような人物が存在を発揮する。サンハがそうなのだが、一応それなりに旨味はある役柄なのだが…、こちらもそれを活かし切れず。何故サンハはファンを気に入ったのか…? 後に明かされるが、何だかそれが『MIB3』と被ってしまったのは私だけ…?
ラストも無情ではあるが、唐突感が否めなかった。
韓国ノワールは大好きだが…、
新しき傑作…にはならず。