「ジュディ・デンチの洗練されたファッションを見るべし。」マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
ジュディ・デンチの洗練されたファッションを見るべし。
前作を見ていた時点から、「生命力あふれる若々しいシニア」というよりも、「人生の含蓄をイギリスに置き去りにしてきた幼稚な老人」という風にしか見えなかったこのシリーズであるが、今回も、もうほとんど「ラブ・アクチュアリー」じゃないのか?と思うような仕上がりだ。良く言えば「若々しい」シニアたちだが、悪く言えば子どもっぽい人たちでしかないのが実に残念だ。お互いに惹かれ合っているのにぎこちなくてうまくいかない二人、なんて確かに可愛らしいけど、それを地でやろうとする厚顔さはちょっと恥ずかしいし、二人の男に言い寄られてどうすればいいか悩む、だとか、妻の浮気を気に病んで暴走してしまうだとか、考え方と行動が全員本当に幼稚でならないのだ。そこに加え、唯一の若者が早合点で空回りする様がまた何にも面白くないと来た。リチャード・ギアの投入も、一種の刺激にはなっても効果的とはいえず、結果全員がどうにかうまく行ってしまう都合のよさがバカバカしくてやっていられない。結局シニア版「アブ・アクチュアリー」が関の山。妙齢になって恋をしてはならないとは全く以て思わないけれど、あまりにも精神年齢の低い恋愛ばかりで、どうにもこうにも興味を惹かれないのである。本当に世の大人たちが、そして人生経験を積んだシニアが見たい映画って、これなのかなぁ?と思ってしまう。大人を更に飛び越えたシニアたちの物語なのだから、そんな「ラブ・アクチュアリー」みたいな話ではない、もっと深いエピソードが描かれても良さそうなのに・・・である。
今回で唯一、と言っていいくらいちゃんとストーリーとして見られたのは、マギー・スミスの存在くらいだ。スミスが作品に投げかける毒っ気も物語を引き締めるし、他のシニアたちの浮ついた悩みよりも数段上のレベルの含蓄で映画の中に君臨しており、年輪を重ねた深みが唯一感じられる存在だ。そしてそれを演じるスミスがまた風格があってチャーミングでいいではないか。前作ではあまり絡みがなくて物足りなかったスミスとジュディ・デンチの共演シーンが(わずかながら)増えたのもうれしい。いっそのこと、この二人の憎まれ口叩き合いながらの絆の物語にしてもよかったのではないか?と思うほどだ。
ただ、ジュディ・デンチのファッションだけは前作に引き続き相変わらず素敵で美しい。ストールのような長い布を片側の肩から無造作に掛けてなびかせるファッションも洗練されていてお洒落だし、体型を隠すでも誤魔化すでもない着こなしが実に良い。体型に囚われることなく、自然に着こなせる服選びが気が利いていて素晴らしいのだ。モデル体型ではないからとお洒落をあきらめる必要はまったくない、とジュディ・デンチが身をもって教えてくれるようだ。お洒落の参考になりそうだ。