ぼくらの家路のレビュー・感想・評価
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子供を育てる社会を。
この映画は、シングルマザーと息子二人の家族の話だが、子供を育てる社会を問題にした話でもあると思う。
少年たちの母親は、子供を放置して友人と遊んでいる。子供の世話をすることもあり、子供に全く愛情を持っていないわけではないが、深い愛情は感じられない。
子供を育てるのに必要なことは何だろうと考えると、ただ愛情があれば良いというのではないと思う。親が自分を犠牲にしなければならないとまで考えるわけではないが、自分が遊びたいとか、面倒に思うときでも、子どもの世話をしなければならない。それは、この社会に生きる親の責任だと思う。
また、この家族の周囲の人々も、無関心で、冷たく、子どもよりも自分を優先して面倒を嫌がる姿が描かれている。子どもたちにとって、味方は、施設にすらいないように見えるのだ。
そういう社会が現実にあり得ると実感するが、そういう社会にしてはいけない、子どもを育てる社会、子どもにとって安心できる社会にしなければいけないと思った。
切ない
確かにガキどもはムカつくんだよ。うるさいし、悪さばっかりする。ジャックだってやなガキだ。でもその責任は子供には全くないと断言できる。断言できるが、その責任をしっかりとこちらが持てるかどうか…持てないだったら世界は老人だらけになるなぁ。人類も終わりだね、それこそ、さよなら人類。
しかしながら、子供はどんな環境であろうと育つもの。いつまでもママ、ママと慕ってくれるわけでもなく、守ってくれなければ親をも捨てる。
以上が見終わっての漠然とした感想。非常に社会的な作品であったと思う。余計なことを言うと、これは現代版大人は判ってくれないだ!と使い古された表現こそがしっくりくる。
劇中の音楽が気に入ったもののサントラが見当たらず、なんか、この映画を見終わった時のような気持ち…
男児の潔い決断が際立つ社会派映画
ドイツを舞台に母親に見捨てられた幼い兄弟が帰る場所を探す『ぼくらの家路』、ストーリーはこう。
ジャックとマヌエルはシングルマザーに育てられる10歳と6歳の男の子。
ふたりの容貌の差異もあり、母親の男出入りが窺い知れるところ。
生活も苦しく、まだ自分の自由を謳歌したい母親は、生活保護機関に相談して、兄のジャックを保護施設に、弟のマヌエルを自身のもとに引き取ることとした。
サマーシーズンとなり、多くの仲間が親元に引き取られることになったジャックの施設であったが、ジャックのもとには母親から「迎えにいくのが2日ほど遅れる」との電話があった。
施設でトラブルを起こしたジャックは、母親の迎えの日の前に施設を離れることにしたが、母親の行方が杳として知れない・・・
触感はダルデンヌ兄弟の映画を思わせる。
つまり、説明は排除し、主人公に寄り添って、物語を進めていくという手法。
まだ10歳にしかならないジャックの、母親探しと生まれ育ったベルリンの街でのサバイバルが描かれるのだが、ダルデンヌ兄弟の映画と比べると、少し緊迫感を欠いているような感じがする。
物語の語り口のせいかもしれないし、それまでの母親の生き方に依存するのかもしれないが、母親探しの行程において観客の知らない場所・人物が頻出してしまう。
まぁ、伏線を張ればいいのかもしれないが、そうすると、この映画のドキュメンタリーイズムが崩れるし、尺も長くなるので、それは出来ないところ。
終盤は意外や意外な展開となって、それまで以上の社会性を感じます。
つまり、行方知れずの母親は3日後あっさり自宅に帰還し、サバイバルを繰り広げた子どもたちと再会するのだが、再会をよしとして終わらせず、母親の無軌道で自堕落な生き方をジャックは良しとせず、決断する。
この映画の「決断」で終わらせるのは、まさにダルデンヌ兄弟の映画を思わせる。
この潔さはこころよい。
個人の意思が、社会派映画を成り立たせている。
これがこの映画の特筆すべき点である。
いい話だけど…
家なき子的な話はさんざんやられてきた話だ。その中でいかにその作品の発想、視点をもつかが大切だと思う。
どうもどこかで見たような感じしかしなかった。是枝監督の「だれも知らない」の方が全然せつない…というような感想しか持てない。ダルテンヌ兄弟の映像スタイルには全然、届いていない。
とはいえ子供の自然な演技は良いかな。
子の心親知らず
元々しっかりした子供が更に大人になる話。
なんて賢く優しく強い良い子なんだ。
母親に悪気はなく、子供を嫌いな訳ではないのがまた痛々しい。
観終わると僅かな憤りと暖かさと切なさが心に残る良作。
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