「明日も生きる。」恋人たち ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
明日も生きる。
何て生き辛い世の中だろうと最近思うことが増えたが、
今作に登場する三人の主人公達にもそれが垣間見える。
普段は他人の問題には無関心なくせに、一たび話題が
注目されると一人に向かって一斉攻撃を浴びせる社会。
各々の価値観が大事といって他人の価値観は認めない。
自分と違う人間はもはや人間だと思ってないかのよう。
狭い日本の狭い社会の小波の中で理不尽な攻撃に合い
居場所を失っていく人々を掬いあげて構成された物語。
通り魔に妻を殺された夫、家に自分の居場所がない妻、
ゲイを理由に親友から距離を置かれる弁護士、と悲劇
と苦労に苛まれた三人の中で夫の苦悩が中心となるが、
理不尽な妻の死から何年も彼の時間は進んでいかない。
大切なものを失った人間にまで社会は甘くない仕打ち
を齎すが、彼を救おうと助言する上司も登場し自身の
身に起きた不遇を優しく語り諭す。生きてさえいれば
またそのうちいいこともある、と誰もが共感を覚える
場面でも本人にとっては死にたくてたまらないそんな
状況があることを彼が風呂場で泣きながら自殺を図り
失敗嗚咽するシーンが訴えてくるから胸が張り裂ける。
他人にはいえない悩みや秘密を抱えながらやり過ごす
人生はいかに多いか。しばしの現実逃避も少なからず
あっておかしくはない状況がリアルに訴えかけてくる。
これが無名の俳優陣というのも凄いが、だからこその
表現力がそこにあり、かなぐり捨てるのってこういう
ことかと納得のいく演技。長編だがまったく飽きない。
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