「つらい気分になる」恋人たち 古泉智浩さんの映画レビュー(感想・評価)
つらい気分になる
女性も男性も負の側面ばかりが描かれていて、誰も魅力的に見えなかった。
特に奥さんを通り魔に殺された人は、犯人を死ぬほど憎んで国民健康保険を滞納するほど弁護士を当てにしていて、「自分はバカだから」と弱音を吐き、自殺未遂するほど苦しんでいた。見ていてつらかったのは、彼には勉強して自分で裁判を起こす覚悟も、殺人術を見に着けたり、殺害の方法を練るなどする覚悟がないところだ。「罪は罪であり、彼には立派に更生して社会に戻って欲しいです」とほほ笑んで話して、本心は誰にも言わず、犯人が自由になったら殺せばいいのにとしか思えなかった。
服役や死刑が怖いのだろうか。自分を安全な場所において石を投げようとしている態度にイライラして、そんな人の愚痴を見るのが苦痛だった。
更に彼の身近には軽はずみに天皇を殺害しようとして、腕を失った人がいる。その人の苦悩たるやどれほどの事だろう。そんな狂人を近くに置くことで、彼の立場を相対化しているような表現はどんな意図なのだろう。彼によりそった表現なのか、突き放した表現なのか、意図がよく分からなかった。全体的に辛辣な目線での表現なので、突き放していたのかなと思った。
川をボートで移動する描写の爽快感が素晴らしかったし、彼には天才的な橋の点検能力がある。周りの人も優しかった。舞台設定が東京なのか田舎なのかよく分からなかった。
スナックのおじさんと不倫するおばさんが、野ションしたり、雑におっぱいを見せたりと、とんでもない役だった。
立ちションするデート中のカップルが、女の子がブスなんだけどニコニコしていてかわいらしく、とても楽しそうだった。この映画で唯一楽しそうな場面だった。