「ウェルメイドの対極にある訴求力」恋人たち だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
ウェルメイドの対極にある訴求力
妻を通り魔に殺害されたアツシと、
姑とも夫ともしっくりこない瞳子と、
親友への密かな思慕を偏見によって奪われた弁護士のお話です。
悲しみと絶望と、ほんの少しの希望が、荒々しく突きつけられる映画でした。
見易さや、行儀の良さや、受けの良い美しさから遠い映画です。だから私の生きる世界にとても近く思いました。
アツシが黒田に怒りを吐露するシーンは、やっと誰かに話せたね、ゆえゆえ!という気持ちと、アツシの怒り、悲しみが流れ込んできて涙がこぼれました。
アツシは不器用ですね。不器用な人って周りのフォローがないとこんなに生きづらいのか、と愕然としました。アツシが悪いわけではないのに、そのうまく行かなさについついアツシを叱責したくなりました。
がんばって人に伝えようと誰もいない部屋で一人語りをするアツシ、弁護士にがんばって伝えようとするアツシ。でも、本当に内容が拙くて、気持ちは慮れるけれども、つたない言葉で、弁護士に華麗にスルーされる感じがリアルでした。
あれ、台本通りなんですかね?すごいなぁ、あんなセリフかけるなんて、すごいなぁ。整った文章を書けて、物語を構成できる技量がある上であの表現でしょ?すごいなぁ。
黒田がよかったです。黒田がとても救いでした。私は誰かの黒田になりたいです。黒田のそっと寄り添ってくれる感じが、とても救いに思いました。あめちゃんをくれた女の子もよかったですけどね。
痛々しさに目を背けるシーンが多数ありました。特にパート主婦の言動に、とてもよく知っているから見たくないものを見たきがして、何度か目をそらしました。
気まずさです。
恐らく彼女に自分を見たのでしょう。
ラストに提示された瞳子の希望は、夫からの関心のようでしたが、あの交わりで本当にいいのか?と思いました。
つか、常備しなさいよコンドーム。今時自販機て…見たことないわ。もう少しコミュニケーションとしての性交渉があるならいいですが、あの夫とのそれは生きてる穴扱いじゃないですか。夫がしたいときに跨るだけって…
瞳子が訪ねてきた光石研に絵を見られて、見ないでーきゃーみたいなことしてるのが腹たちました。オバハンの出す声ちゃいまっせと思いましてね。
もっと生きやすくなる方法あったやろうし、なんであんな夫と結婚してられるねんとか、鶏をしめたとこがどうおもろいねん、鍋でその肉つつきながらしめた話するなよなどなど、瞳子にはイライラしました。
夫からの平手打ちはかわいそうでしたが、なぜ別れないでいられるんだろう。
弁護士はあまりいい人間ではないです。すくなくとも私は苦手なタイプです。アツシを見下した態度や、恋人を人前で愚妻扱いするところなど、尊大で男尊女卑的な嫌いな人の典型です。
笑顔がまた胡散臭く(小沢健二をすこし今風にしたような…)嫌でした。あの笑顔は仮面とわかっていても、むかっとします。
彼の被った理不尽は、ずっと思慕していた友人を、その妻の偏見から失ったことです。明らかなる偏見からの差別で、お気の毒なのですが、君はちょっと自分の行いを改めた方がいいよ?と思いました(子供の耳たぶを触った件ではなくね)。
足の怪我も明らかに突き落とされてましたからねぇ、恨まれてるんでしょうね。
脇役が実力派揃いでした。
偏屈姑役の木野花(歩き方がすごく年寄りっぽくてメガネ会計ばばぁの面影なし←褒めてます)、
ヤバイ人役の光石研(注射打つシーンのマトモからの逸脱感はすごかった…)、
ヤバイ人②役のリリーフランキー(人の話を聞かずに煙に巻く話術がうさんくさかった←褒めてます)、
美人水って何よ?な、安藤玉恵(皇室詐欺うけたw)と、
なかなか揃ってます。皆さん見るものの心をガリッと引っ掻いてくれました。
あ、忘れてた、山中崇もだ。この人も尊大でしたねぇ。行政、公務員というやつのいやーなイメージそのものですわ、あの態度。
で、名の知れてない人も、いい爪痕を残していました。
アツシの後輩のうるせーばか男子と、
部落(って言ったよね?)出身を隠して結婚した旦那と別れたいという女子アナ(ムカついた←褒めてます)が、
インパクトありました。
女子アナの人は、見たことある顔だけど名前がわからん人でした。
他にも言いたいことは一杯あるんですが、すごく長くなりそうなのでこの辺で…