劇場公開日 2015年6月20日

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「見たいモノしか見ない世界を描いた作品。」コングレス未来学会議 Opportunity Costさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0見たいモノしか見ない世界を描いた作品。

2015年5月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

楽しい

怖い

本作の魅力は滲み出る違和感。

冒頭は現在技術の延長線上を描く近未来。
「数十年後、いや数年後はその状況に。いや、知らないだけで今でも……」という想像が付き易い、違和感の無い近未来を見せた上で。
そこから急激に進展した未来の世界に観客を拉致する。
“拉致”という表現を使いたくなるような急激な世界観の変貌。
或る種の酩酊感を伴う急激な変化により否応無く作品に惹き込まれます。

無理矢理連れて行かれた中盤以降に描かれる世界は一種のユートピア。
或る種のフィルターがかけられた世界はネガティブな要素がまるで無い。
…と見せつつ、ユートピアという言葉の印象が何処か“ディストピア”の要素を匂わすのと同様に。
部分部分で不穏な雰囲気が滲み出ている。
周囲の人間が熱狂する姿を描かれる中で何処か距離や不信感を覚える主人公と共に。
観客はその世界観に違和感を覚え始める。

被膜のような違和感は折り重なり何層にもなり。
しかし違和感の確証は得られず不安ばかりが煽られる中で迎える或る時点。
正に“我に返る”瞬間。
その瞬間に思わず息を呑み……状況を理解して……深く息を吐く。
その一連の感情の揺さぶりに痺れました。

人々が見たいモノしか見ない世界を描いた本作。

正直、上映時間120分は少々長い。
描かれる物語が、要素が全て必要とは思えず。
中盤以降に差し込まれる或る人物との逢瀬等は中弛み感が否めませんでしたが。
その点を差し引いても急激な世界観の変貌に伴う酩酊感は魅力だと思います。

前情報を殆ど入れず、作品に乱暴に揺さぶられ酩酊感を味わうのが正解かと。
オススメです。

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Opportunity Cost