劇場公開日 2015年5月1日

  • 予告編を見る

「現実味のある暗さが楽しめる」リベンジ・オブ・ザ・グリーン・ドラゴン にっこりさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5現実味のある暗さが楽しめる

2021年6月22日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 「成り上がる」「のし上がる」といった言葉がこの映画のあらすじに使われていますが、そこから連想されるような痛快さは一切無いタイプのギャング映画です。
 同じくそういうタイプのギャング映画であり、ドンキュメンタリーという面でも同じの「グッドフェローズ」と比較すると、人の命がやたらと軽くて、それでいて展開が決して派手ではない面は似ています。しかし、組織の息が掛かっている趣味の良い酒場、高価なスーツを着て高級車に乗るボス、表面上だけでも上層階級の様に振る舞う構成員達、人を殺して暮らしている人間とは思えない小粋なジョーク、公権力を捻じ曲げて手に入れた快適な刑務所暮らし、そういった裏社会なりの煌びやかさが全然無く、観ていた思わず「本当にここで夢が叶うのか?」「このままここで悪さをしてこの先どうなるのか?」という気分になりました。それに加え、子供をも容赦無く殴ったり仕事させたりするモラルの欠如はスラム街的で、どちらかと言うと「シティー・オブ・ゴッド」に近いのかも知れません。
 とは言え結局のところ、「異国の中の中国人」とでも言うべきこの作品最大のテーマによってどちらでもない持ち味、独特な世界観、個性があって、他のどのギャングドキュメンタリーとも楽しみ方が違うと思います。
 暗く、痛快でなく、派手でない。私はこういう内容のものは普通なら途中で集中力を切らしてしまった事でしょうが、この作品に関しては最初から最後まであっと言う間でした。脚本と違って素人が理論立てて説明出来る部分ではありませんが、素人ながら映像技法が優れているなと感じました。カメラワークやカットがテンポ良くスピーディーで、些細なアクションをより迫力あるように見せ、観る側を退屈させません。
 結末が投げやりだったのは大きな欠点です。この映画はドキュメンタリーですが、あの結末も事実だったのでしょうか?そうだとしたら何故兄弟分の首を絞めるような事をしたのでしょうか。そうしなければ、あの人物は結末でする事をする必要がそもそも無かったのですから、府に落ちないところです。

にっこり