「町子で泣き。割とよかったです。」母と暮せば だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
町子で泣き。割とよかったです。
山田洋二作品で、とても好きという作品はなく、そんなにたくさん知ってるわけでもありませんが、どうにも古いと思ってしまいます。
が、井上ひさし原案という点と、黒木華が出る点に惹かれ、観てきました。
この作品では古さではなく、描かれる時代のらしさと思え、好ましく感ぜられました。
勝手なものですね。
作中で黒木華がでてくると、なんだか胸いっぱいになって、思いのほか泣いてしまったりもしました。回想でのニノとの初々しい、いちゃいちゃがあんまりかわいらしいもんだから、ニノがいなくなった世界でけなげに生きる町子がいたいけで切なくて、うるうるでした。
あと、メンデルスゾーンのバイオリンコンチェルトが思い出の曲として何度も出てきました。大好きなので、うれしかったです。
町子は、生き残ったことに罪悪感を感じていて、だから自分の幸せなんて到底考えられないようでした。そんなこと思わなくていいんだよ、生きていることをありがたいと思って、ただ自分が幸せになったらそれでいいんだよと、客席からずっと思っていました。
母と息子の会話シーンは、ややだれる感じがありました。冗長なんです。飽きました。
また、母さん母さんうるせーよとも。そんなに母ちゃんが好きかよと思いましたが、あの息子は幽霊ではなく、母が作った幻想なのかなとおもい、そう思うと母ちゃん母ちゃんなのもわからなくもないかなあと。
でも母ちゃんのいない場面で、浩二だけが蓄音機のそばで回想するシーンがあったので(これまたかわいいいちゃいちゃ)、母が作った幻想説は説得力を持たないのですが。
そう思わないと、マザコン息子を愛せないので、無理やりそのような解釈にしました。
冒頭の記録映画のようなものものしい映像から、ガラス瓶が一瞬で溶ける、原爆が投下されたその瞬間までの場面が、非常にリアリスティックでした。母が長男が枕元に立った、というシーンの兵士たちの姿の仰々しさにも、思わず眉根が寄りました。怖い、と思いました。
戦争を生きた世代の実感が込められているのだと思います。
それらをニノ見たさにやってきている若い女子達の心に残ったら、作った甲斐が増しますな、などと偉そうなことも思いました。
ラストはあんまりいいと思いませんでした。
町子が婚約したとおもったら(それはとても良いことですが)、年越し目前で伸子が死んじゃって、葬式に霊体で現れて親子寄り添って天国に行って、ピンクの世界での死んだ人たちが大合唱しておられました。
母ちゃん死んじゃったら息子は取りついて殺した亡霊じゃんよって思いました。
寿命というにはあまりに吉永小百合は若々しいし、秋あたりから、死亡フラグは見えていましたが、いかんせん若々しく、急に逝きましたなという印象がぬぐえやしませんでした。
上海のおじさんがちょっとかわいそうでした。
全体的にはよかったです。若い子が見たらいいと思います