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コメディアン蜂起
クリス・ロック監督兼主演の日本未公開コメディ。
よくある日本人には馴染み薄いナンセンス・アメリカン・コメディかタイラー・ペリー作品のような黒人コメディの類いかと思いきや、これがなかなかの掘り出し物!
アンドレ・アレン。
スタンダップ・コメディアンからハリウッド・スターへ。
彼が着ぐるみでクマに扮したバディ・ポリス・ムービー『ハミー・ザ・ベア』はシリーズ化され、世界中で大ヒット&大人気。
さらにはセレブの恋人と結婚間近で、結婚式は“世紀のウェディング”としてTVで大々的に生中継される。
薔薇色!順風満帆!
…なのだが、
実はアンドレは最近、人気が下降気味。
映画は当たっているが、批評家からはボロクソ酷評。ある男性ジャーナリストが天敵。
コメディ俳優として行き詰まりを感じ、シリアス路線への転向を考えている。
初めて挑んだシリアス作品、彼がハイチの革命家を熱演した『蜂起』の公開を控えている。
アンドレは結婚式より、新作映画の事で頭がいっぱい。
結婚式の話題と生中継を利用して、映画の宣伝をしようとする。
そんな時、女性ジャーナリストのチェルシーから密着取材を受ける事に…。
おそらく古今東西、コメディアンの悩み。
映画ではあんなに明るく愉快なのに、素の顔は…。
実際の映画界でも何人か思い浮かぶ。アノ人とか、アノ人とか、アノ人とか…。
これも万国共通で、コメディアンとしての自分がイヤで、コメディ以外のジャンルに挑戦したい。
でも、周囲からは冷ややかな目。
アンドレが人気者なのはコメディアンだから。
それがイヤなんだ!
チェルシーの取材を通じて、アンドレはこれまでの自分を見つめ直す。考え直す。
そんな時、チェルシーの思わぬ正体を知って、ショックを受ける。
自暴自棄に。
酔っ払って、店で暴れて、逮捕。勿論、TVで大々的に報じられる。
これが実際だったら、嗚呼、この役者もう終わりだな、と思う。
アンドレの天敵の男性ジャーナリストは、チェルシーの別名義だった。
何故酷評しといて、密着取材を…?
実はチェルシーは、元々アンドレのファン。スタンダップ・コメディアン時代からの。
そんな彼が最近パッとしない。
その理由を知りたくて。
酷評も彼を鼓舞させる為に。
悩みに悩む者は原点へ立ち返る。
チェルシーに連れられ、コメディ・ショーへ。
そこで久し振りに舞台に立つ。
大ウケ!
忘れていた、この感じを。
忘れていた、客と笑いと反応を肌で感じる事を。
思えば、映画が当たった=ウケたと思い込み、何もかも自分の事ばかり。
人を笑わすって、こんなにも心地よいもの。
そして自分自身も、晴れ晴れ!
コメディアンのままでいいじゃないか。
新しいジャンルに挑戦したければすればいいじゃないか。
自分のやりたい事を!
クリス・ロックが監督としても役者としても軽妙に本領発揮。
特にコメディ・ショーのシーンは、自身もスタンダップ・コメディアン出身の事もあり、あれは脚本に書かれた台詞ではなく即興だろう。
チェルシー役のロザリオ・ドーソンも好印象。
多少エロネタはあるものの、お下品でナンセンスな笑いは控え目。
政治、人種問題、ショービジネスの内幕をチクッと風刺。
多くの本人役でのゲスト出演もお楽しみ。これはクリスの人脈だろう。
終わり方も良かった。
アンドレとチェルシーの関係はあくまで、自分自身を見つめ直すきっかけをくれた存在。
でも間違いなく、淡い想いも…。
しみじみ、ハートフルに。
その後(続編)も期待出来そう。
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