「早くも登場!今年のワースト!」信長協奏曲(ノブナガコンツェルト) Dickさんの映画レビュー(感想・評価)
早くも登場!今年のワースト!
★今日(2025年6月7日)地上波で放映されたのを機に、2016年1月28日にTOHOシネマズ・名古屋ベイシティでリアルタイムで観た時の感想をアップしておきます。
❶まとめ:早くも登場!今年のワースト!
「すべては一夜の夢だった」というのだったら、もっと良い点をやれたのに。(笑)
➋元から期待はしていなかったが、好きなキャストが何人も登場するので、興味本位で観た。
そして、あまりの酷さ、お粗末さに驚いた。怒りがこみ上げてきた。
➌ロジックを無視していて、最初から最後まで許せない。
❹現代の高校生サブロー(小栗旬)が戦国時代にタイムスリップし、奇しくも同じ顔をした織田信長と入れ替わる。
公式サイトによると、サブローがタイムスリップしたのは1549年だが、映画はそれから30年近く経過した1576年の安土城築城時代から始まる。
それまでの出来事は、紙芝居的に超特急で描かれるが、その時間たるや僅か数分間。
観客が一番知りたい、「タイムスリップした理由」や「織田信長と入れ替わった理由」はバッサリ省略されてしまっている。
❺幾つもの戦いでは、サブローが屈強な侍たちを、刀と槍でバッタバッタとなぎ倒す。
お前はスーパーマンか?(笑)
サブローは普通の高校生で、本当の刀や槍には、生まれてから一度たりとも触れたことなどない筈なので、そんな芸当が出来るわけがない。
❻他にもロジックが破綻していることは山ほどあるが、一番は、ラストの帰蝶(柴咲コウ)からのビデオメッセージ。
そのメッセージが収録されているスマホのマイクロSDカードは、サブローと同様、戦国時代にタイムスリップし、現代に戻ってきた外国人からサブローに届けられたものだが、問題は:
①録画されたのは、信長も、秀吉も亡くなり、家康の平和な天下になってから。
つまり、本能寺の変から30年以上経っている。
②それなのに帰蝶は齢を取っていない。
③それよりも、何よりも、スマホのバッテリーが30年以上持つ筈がない。
日本ではまだ発売されていないソーラーチャージャー内蔵タイプならあり得るが(笑)。
❼サブロー自身も、タイムスリップしてから、本能寺の変までに33年もの年月が経過しているのに、彼は若いままだ。
1549:サブローがタイムスリップ
1560:桶狭間の戦い
1576-1579:安土城築城
1582:本能寺の変、信長死去(満48歳)
1589:秀吉天下統一
1598:秀吉死去
1603:家康征夷大将軍
1615:大阪夏の陣、豊臣氏滅亡
❽サブローがタイムスリップしていた信長時代は33年間。
その間、現代のサブローはどうだったのか?
回答A:現代ではサブローの時間が止まっていて、彼の不在に誰も気づかない。
回答B:どちらの時代も時の流れは同じ。サブローは齢をとり、行方不明扱い。
回答C:どちらの時代も時の流れは同じ。サブローは齢をとるが、タイムスリップした時点に戻ったので若いまま。
映画では全く言及されていないが、正解はA。
ロジック的にはCなのだが、本作では上記❼の通り、信長時代のサブローが齢を取っていないので、消去法よりAとなる。
❾観終わってから、チラシや公式サイトを見た。
原作はコミックで、先にフジテレビでアニメ化&実写ドラマ化されていることが分かった。
それで、冒頭の「超特急紙芝居」の理由を理解した。
❿つまり、本作はフジテレビのドラマを観ている人のみを対象に作られている。
そうでない人は無視されている。
許せない! これは純粋な映画ファンに対する冒涜だ。
こんなことを許したら、日本の映画界は駄目になってしまう。
世界の笑いものになってしまう。
こんな映画は観てはいけない。
本気でそう実感した。
⓫この根本原因はTV局主体の映画製作方式にある。
近年流行りの「製作委員会方式」は殆どにTV局が関わっている。
昔は映画で人気の出た作品を、別のキャスト・スタッフでTVドラマ化するパターンが多かった。
今は反対で、人気のTVドラマを、同じキャスト・スタッフで映画化する方式がメインになっている。
これが問題なのだ。
つまり、この方式の映画の監督や脚本家はTV畑出身で劇場映画の基本を理解していない人が多い。
彼等の最大の顧客はTVの視聴者であって、映画の観客ではないのだ。
だから、上記❿のような事態となるのだ。
⓬昨年度日本映画マイ・ワースト5位の『劇場版MOZU』もこれにピッタリの事例で、TV版を見ていない映画ファンには「???」の連続。
当時の感想:TV版を見て、主要キャラと過去の経緯を知っていないと十分理解出来ない。TVを見ている人を対象に作られていて、TVを観ていない人は蚊帳の外に置かれている。エンドクレジット中に、本編と関係ありそうだが、観ていないシーンが多数登場した。多分TVのシーンだろう。マニラで大規模なアクションロケをした大作だが、面白くない。これは作り手の責任だ。
⓭劇場映画製作にかかわる海外のテレビ局としては、フランスの「Canal+(カナル・プリュス)」が有名で、殆どのフランス映画に出資している。
しかし、日本のTV局と大きく違う点は映画ファンを無視せずに重要視していることだ。