「悪くない。でも中途半端」進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
悪くない。でも中途半端
前作が期待外れだったせいでハードルが下がり、今作は思ったより悪くない、という感想になった。
ストーリーは今作から漫画原作と完全に別展開になったせいか、(細かいところの描写の雑さは気になったものの)大きな破綻はなく、まあまあ面白かった。
映画実写は、漫画原作とは別のところに感動や驚きのポイントを置いていて、そこそこ面白い。
例えば、前作では「なんだこの勘違い中二病野郎は…」なシキシマも、今作を見れば、「こいつがいなかったらストーリー全然まわんないな」という重要キャラだと再評価。
実際、映画実写だと明確にキャラが立ってて印象に残るのは、シキシマとハンジくらいだったりする。
他のキャラはストーリーのために存在してる、台本読んでるだけのやつらと思えてしまう。シキシマは自分の意思をもってストーリーを動かす側にいる。
たぶんそれは、他のキャラは何が起こってるのかよくわかんなくて、状況に翻弄されてるだけだからなんだろう。
巨人がなぜ存在するのか、この世界は何なのか、ということが原作漫画ではまだ明かされていないが、本映画実写では明かされている。
だけど、せっかく実写映画独自のストーリーにしたのに、その見せ方があまりに中途半端。ゆえに、驚きも感動も薄い。
「世界の端=壁(エンドオブザワールド)」を超える、というのが実写映画版の最大のテーマのはずなのに、それがとてもわかりにくい。
壁の向こうには何があるのか、という謎や期待感を高めるエピソードもあまりないし、実際の壁の外の光景にあまり驚きがない。
「壁の外には海があるんだよ!」(うん、まああるんじゃない?)
「あの鳥は海を見たことがあるのかな?」(うん、あるだろうね)
「自由になりたいんだ!」(ついさっき、人を殺させないために壁を塞ぐって言ったばかりやん?)
壁の外への期待がこめられたセリフが、心に響かない。
そして、いよいよ壁の外が明かされるラスト…。
壁の外は、なんと、未来の日本だったんだよ!(な、なんだってー!)
で、驚かせるつもりだったんだろうが、もう全っ然驚かなかった。猿の惑星の使い古されたパターン。
だってそれが驚くようなストーリーになってないんだもの。完全にとってつけた感。
これでは弱いと思ったのか、エンドロール後に更なる付け足し。
なんと、壁の中の世界は、壮大な実験施設だったんだよ! 全てを支配している本当の敵は姿さえ見せていないんだ!(な、なんてこった!)
って、このレベルの付け足しなら、完全に無い方がまし。なんでこれつけたんだろう? まさか続編の布石?
このエンドロール後の付け足しがあるせいで、エレン達の大きな犠牲を払った壮絶な戦いは、所詮オーバーロード的な存在の手のひらの上の虫達の争いに等しいものだった、的なニュアンスが生まれてしまった。それはそれでかまわないけど、またテーマがぶれる。
「世界の端」というテーマの映画で連想するのは、トゥルーマンショーや、ダークシティ。いずれも、世界観の秘密はストーリーと密接に関係していて、驚きと感動と社会風刺がある。
この実写映画版進撃の巨人がそういう上級SFの類を目指したものだ、という意気込み自体は感じられるだけに、脚本の中途半端さがもったいない。
原作漫画では、壁の外ではなく、壁そのものに謎、神秘性、宗教性を持たせているところがうまいと思う。
特撮に関しては、前作ではあまり感じなかったが、今作では妙に古臭い印象をうけた。音楽や、カメラ、着ぐるみ感のある映像など…。個人的にはこれはこれで味があって良いと思う。好きずきが分かれそうだけど…。
あと、邦画SFではいつも感じるんだけど、画面がくっきり明るくて人物がはっきり見えすぎてリアリティがない。「汚し」も中途半端で、髪はさらさらきれいだし、お顔もちょっと土つけたくらい。
たぶん俳優を美人にとらなあかんという決まりがあるんだろう。そのわりに、ミカサが空から降ってくるシーンのブサイクさにびっくりしたけど…。