「己の闇とどう向き合うか」バケモノの子 セロファンさんの映画レビュー(感想・評価)
己の闇とどう向き合うか
バケモノの世界に迷い込んだ少年がそこで出会ったバケモノ熊徹と師弟関係を結び、互いに反発し合いながらも修行に励み、成長していく物語。
‘師弟愛’‘ 親子とは?’‘強さとは?’‘学びや成長’‘心の闇’‘自己受容’等々様々な事について考えさせられました。詰め込みすぎ・薄味等のご意見も拝見しましたが、確かにそれもわかるような気もします(メッセージが多かった分、私もこのレビューをどうまとめようか迷いました)が、単純なせいか私はそれ以上に大きな感動を味わいました。特に、九太と熊徹の不器用な二人が互いに心をぶつけ合い、絆を深めていく姿には涙しました。
九太と熊徹は似たもの同士。強がりで意地っ張りだけど本当は寂しがり屋。互いに孤独と闘っている。似たもの同士だから、顔を合わせれば反発ばかりだけど、徐々に相手の中に自分を重ね、心を通わせていく。鏡のような関係とも言えるかもしれない。共に過ごすうちに、自分を見つめ、自分を知る事ができた。そして修行生活の中で、九太も熊徹も、自分の弱い部分や足りない部分を認め受け止める事ができたのだろう。
九太と一郎彦も似ている。というか一郎彦はもう一人の九太だ。二人ともあの世界では異質な存在であり、共に闇を抱えている。九太も一郎彦と同じ道を辿っていたかもしれないが、熊徹との出会いが彼を変えた。独りで苦労しながら強靱な身体能力を身に付けた熊徹は、同じく孤独であった九太にとって希望の光だったに違いない。
闇に呑み込まれた一郎彦。自分はなぜ父親のように牙が無いのか?鼻が伸びないのか?バケモノにも人間にもなりきれず、自分の居場所が見出せない。ありのままの自分が受け入れられなかった一郎彦。闇は知らぬ間に彼の中で大きくなっていった。
闇は誰の中にも存在する。不安や悲しみ、怒りや憎しみ等、様々な形や大きさで。強がってそれに打ち勝とうとするか、気付かぬ振りをするか、静かに向き合うか。
自分の中の闇に気付き、それを受け入れる事が出来れば、人は一段と強くなれるし、より奥深くもなれると思う。物事は自分の受け止め方次第で、光にも闇にもなる。(スターウォーズでは無いけれど)光と闇のバランスを整え、‘心の剣’を鍛えたい。