あんのレビュー・感想・評価
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原作と
原作を読んで、ハンセン病資料館に行き、映画を観た。より深く作品世界に入り込むなら、原作をお薦めする。そもそも難しいテーマを扱っている長編小説を2時間の尺で収めるには取捨選択をせざるを得ない。原作では丁寧に描かれている経緯が、映画では所々省かれており、細切れのように場面が飛ぶ印象がある。
それでも映画の素晴らしいのは、それを補って余りある視覚情報である。舞い散る桜吹雪、香り立つようなあんの煮炊きの場面、療養園の風景は強く訴えかけてくる。樹木希林の演技に注目が集まるが、永瀬正敏の演技も素晴らしかった。あまり演技派という印象はないが、主人公の朴訥として、疲れ切り、どこか流れに流されてしまうところを見事に演じていた。個人的にはラストシーンは取ってつけたようで違和感を感じたが。
よい映画の時間だった。
生まれてきた意味。生きている意味。魂の浄化。
心の中に巣くう恐怖。
感染病に対する、手っ取り早い処置・隔離。
特効薬が開発される前まで死病だった結核。
赤痢・コレラ・天然痘…。
身近に感染者が確認されれば、保健所に呼び出され、検査させられ、感染し、他への感染可能性があるとなれば、隔離され、関わる場所が消毒される。
インフルエンザ他でも、出席停止・出勤停止となり、”家”に隔離されて、感染拡大を防ぐ。
感染方法が明確になる前のエイズ・HIV。
そして、今コロナ・ウィルス…。
命を守りたい。死への恐怖が、行動を激化させる。
加えて、ハンセン病は、身体の変化がその恐怖に油を注ぐ。
そんな、種の保存として当たり前の思いと、
人として生きることへの思い、
そしてこれだけ皆がググって情報を得られる時代にも関わらずの無知・偏見
がベースとなって、物語が展開していく。
ある事情から、強制的に生き方を定められてしまった徳江さん。
ある事情から、自分で自分を籠の中に押し込めている千太郎。
ある事情から、”自由”なはずなのに、”自由”になりきれないワカナ。
この3人がより糸のようによりあって、物語が進む。
亡くした自分の子を千太郎に投影する徳江さん。
亡くした母を徳江さんに投影する千太郎。
失くしかけている家族を、徳江さんと仙太郎に見出しているワカナ。
本人たちも自覚していないふんわりとした疑似家族。
人生は悪いこと、思いもよらぬこと、思い通りにならぬことだらけ。
生まれてくる家族も選べないし、罹患する病も選べないし(生活習慣病を除く)、良かれと思ってしたことが仇になることもある。
それでも時折、遭遇する楽しいこと・すてきなこと。
手間暇かけて、面倒な積み重ねの果てに作り出せる美味しい時。
はまってしまった環境の中での、それぞれの思い・ふるまい・日々の生活。
そんな営みを、世間の人はわかってくれなくても、お天道様が、お月様が、木々が、風が、畑からのお客様(農作物)が見ていてくれる。
徳江さんの作るあんのようになれればいいけれど、何にもなれなくっても、そこにいるだけでいい。
映画は、確かにハンセン病患者を扱ったものだけれど、
それよりも、千太郎のいら立ち・号泣とともに、魂が洗われていくような気になってくる。
これだけでも、号泣なのに、
市原悦子さんが出てきただけで、さらに涙が出てきた。
二大女優の競演。
もっと見ていたかった。
合掌。
原作未読。
人としての生き方。
先日テレビで映画「あん」の放送がありました。
ゆっくり1人の時間に観ようと録画をし今日ひとりで見ていました。
人と人との繋がりが 善きも悪きも影響し いろいろな人間模様が見れました。
偏見という人の見方により 無意識のうちに 傷つけ傷つけられたり
喜びや悲しみの深さを感じました。
樹木希林さんの想いがとても強く感じました。
共演されているお孫さんの表情がとても愛溢れていて
心配そうに演じるのが 真実の愛を感じました。
お亡くなりになり 樹木希林さんの存在がとてもとても強く感じました。
病気と闘いながら 生と死 を演じる姿は
これからも映像や残された声、言葉により 蘇ってきます。
小さい頃に見たドラマの「ジューリー」がとても懐かしく思えます。
樹木希林様 感動をありがとうございました。
本当に温まる映画でした。大好きです。映画館で観たかった。 状況は違...
本当に温まる映画でした。大好きです。映画館で観たかった。
状況は違えど、それぞれがカゴの中のカナリアのようにとらわれてきた人たち。樹木希林さん演じる徳江さんもその一人でしたが、カゴから出てきてやりたいことをやるように。その過程で、主人公たちのその閉じた心を柔らかくほぐしていってくれます。
全員の演技が本当に素晴らしかった。ストーリーのゆったりとしたテンポも心地よかったです。誰も怒鳴ったりしない映画って心臓に優しい・・。
ちょうど数日前、お正月に小豆を炊いたところでした。たまにしか作らないこともあり、なかなか満足な仕上がりにはならないのですが、この映画を見て、そうか小豆の声を聞くのか、とはっとしました。次はもっと気持ちを込めて作ってみたい。でもほんと、乾燥した状態のあずきの一粒って、ツヤツヤしていて美しく、いつもうっとりします。
見てよかった
すごい映画でした
樹木さんは満点
あえて今取り上げなければならない題材でしょうか。私はむしろこうして...
五感に訴える映画
女性らしい視点の映画
樹木希林は最高です
生きる意味
【今作品は、近年の邦画の中で圧倒的な傑作であると、私は思います。】
河瀬直美監督作。
樹木希林さん主演の”ある重いテーマ”をベースにした圧倒的な傑作。
-ストーリーは”春””初夏””秋”そして、再び迎える”春” と移ろいゆく季節を美しく映し出しながら静かに描かれる。-
永瀬さんの人生を諦めたような諦観の表情を浮かべる千太郎が黙々とどら焼きを作る存在感は稀有であるし、樹木希林さん演じる徳江が小豆に”優しく話しかけながら”あんを作る姿には、崇高さすら漂う。
孤独感を漂わせる女子高生ワカナを演じた内田伽羅さんの透明感。
故市原さん演じる佳子の哀しき過去を背負いながらも、体中から醸し出される、優しき佇まいも、この作品の奥深さを支えている。
必見であると思います。
<全ての人に、毎年、桜の花びらが舞う”季節”の到来を信じたい・・。>
<2015年7月5日 劇場にて鑑賞>
<その後、他媒体で再鑑賞>
■追記
「キネマ旬報ムック 「あん」オフィシャルブック」は、もし手に入れば、一読されることをお勧めしたい。
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