「店長さん。」あん ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
店長さん。
タイトルにもなっているあん、あんこは昔から大好物だ。
つぶあんもこしあんもうぐいすあんもしろあんも大好き
しかしそのあんも食べてみるまで美味しいか分からない。
徳江が「私は小豆の声を聞くの。どこから来たの?って」
その人がどんな人生をどんな想いで生きてきたのか傍目
には分からない。分からないから好き勝手に他人は宣う。
見た目で判断し、噂を信用し、流れに乗り悪口まで言う。
しかしそんな残酷な運命でさえ生きる意味があることを
今作は尊厳を持って謳い上げる。自由に外へ出ることや、
やりたい仕事を得ることすら許されない人達がいたのだ。
らい病(ハンセン病)については私も詳しくは知らないが、
長きに渡って隔離され、幼少期からそこで人生を終える
人達がたくさんいたことを学生時代に習った記憶がある。
冒頭美しい桜が咲き誇り、日本の伝統和菓子が紹介される
一方で、中盤からは暗い歴史や差別認識が浮き彫りになる。
辛く重い構成もサラリと明るく描写されており、特に徳江
を演じる樹木希林が縦横に動き回る場面ではほぼ希林劇場。
それを優しく受け止める永瀬正敏が素晴らしい。不器用で
寡黙な男が少しずつ心を拓いていく場面が絶妙なタッチで
優しく描かれ、希林の実孫・内田伽羅(モっくんにソックリ)
の素人っぽさもよりリアルで愛らしい。中学生が悪気なく
尋ねた疑問をサラリとかわす老女の姿勢は真っ直ぐだった。
人足が途絶えて徳江が来なくなり、やっと過去と向き合い
始めた店長さん(この呼び方が温かい)が母親への懺悔から
徳江に尽くしていたことが分かるとまた涙、少しずつ綻び
始めた頑なさが解けた彼の顔が、ラストどら焼き屋台での
気持ちよい掛け声に繋がりホッとした。頑張って店長さん!
(あーどら焼き食べたくなってきた。鯛焼きも大福もいいな)