合葬のレビュー・感想・評価
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それぞれの志。
なんとも悲しい青春群像時代劇。
杉浦日向子の原作同名漫画は読んだことがないのだが、
江戸末期~無血開城~彰義隊とくれば大体の察しはつく。
変わりゆく時代に翻弄された市民はもちろん、新しい
時代がどんなものになるのか想像がつかない故に怖いと
いう点では、敗戦間近の日本が描かれた「日本のいちばん
長い日」で、最後まで徹底抗戦を訴えた軍部の若者達が
とった行動に近いと思った。平和を以て変わる時代など、
変わってみなければ分かるはずがない。むしろ、今まで
守り抜いてきた将軍への忠誠に圧倒され、自制を失った
強硬派がついに討伐されてゆく道のりの方が分かり易い。
仕方ないとはいえ、味方同士国民同士の殺し合いなのだ。
穏健派は何度も避けることを訴えたのだったが…。
新進監督の作風は個性的で現代テイストが盛り込まれた。
確かに時代劇らしからぬ言動や音楽・構成の「?」は多いが、
極端に薄暗い映像の色合いは時代の空気感を顕わしており
私的にそんなに悪くは感じなかった。語りも聞きやすい。
妖気漂う寓話も物語に合っており、今後の彼らの不遇を
予感させるものばかり。楽しい話ではないのだが、そんな
時代に生きながら青春を謳歌したともいえる(恋愛や初恋)
あの年頃の男の子が当時抱くであろう想いや、逆らえない
忠誠への混乱など、時代を見据えていたオダギリが演じる
森の立場からも見届けている。悔しい・もどかしい歴史を
現代の若者の立場から考えてみるのにふさわしい作品だ。
(それぞれの志が違うのも特徴。それが一気にのみ込まれる)
報われなかった青春。
既に投稿済みのレビューを見ると、評価が低いのでとっても不安になりつつ、でも脚本が、渡辺あやさんなのでみなくては!と気合いいれていってきました。
だいぶ良かった部類かと思います。あくまでわたしは、ということになるのでしょうが。
この原作は読んでないですが、杉浦日向子の香りは確かに感じました。怪談とか、人ではないものがするっと馴染んで差し込まれてるあたりに。冒頭の臓物の汁みたいのとか、特にそう思いました。
柳楽優弥も瀬戸康史も、岡山天音(始めてみたけど彼いいわー)も良かったし、愛しのオダギリジョーも門脇麦ちゃんも良かったし、ラストの小市慢太郎も良かったと思いましたよ。
人の見方ってこんなにも違うんですねぇ。
歴史をどう描いたかというのは、よくわかりません。慶応四年が1868年だ、というのが辛うじてわかる程度の歴史の知識ですから、彰義隊なんて初めて聞く部隊です。
でも、たぶん映画の主眼はそこではないです。なので歴史を知らなくても見られます。
江戸から明治への時代の変換期に、青春を消費しなくてはならなかった若者たちの、愚かで浅はかで痛々しい青春の輝きを鮮明に収めた映画だと、理解しました。
三人の男の子を中心に進むお話です。
江戸城を明け渡す徳川慶喜の姿にカリスマ性を見出し、許婚も家督も捨て、徳川に命を捧げることに酔う極。
長崎帰りで弁はたつが向こう見ずでお人好しで、本当にまだまだ子供な悌二郎。自分のすべきことも見えず、自分の理論も押し通せず戦闘に加わり1番あっけなく死んでしまいます。
そして養子先を追い出され、行くあてもなく彰義隊に入り、好きなになった娘は極が好きで、何もできないまま明治を生きて迎えてしまった柾之助。こちらも本当に哀れなり、でした。
柾之助の視点が多めで進む物語でした。
写真館でハットかぶったり、ピストル撃つ真似してはしゃぐ姿は高校生男子そのもの。
世界の広さも己の器もわからず、人を動かす言葉も力もないけれど、湧き上がるものにただ突き動かされ、力点のずれた言動を撒き散らす。若さの醜さを隠せない彼らの姿に、己のあの頃がどうしても重なり、本当に切なく見ました。
そういう意味で大変普遍的な青春の挫折物語です。通過儀礼ものとも言えると思います。
でも、悲しいことに時は江戸と明治の狭間。しかも彼らは幕府に近い身の上だったわけで、間も無く消される体制側として、通過儀礼を迎えてしまったわけです。
よって、青春の挫折で済まず、悌二郎は戦死し、極は自害に追い込まれてしまった。
その悲しみの重複が、胸に迫りました。
死に様も、情けなく、痛々しかった。
悌二郎は気付いたら死んでた、というところだし、極は慶喜に夢枕で授けられた脇差しで立派に自害すると吠えてた割に、防衛本能を理性でねじ伏せられず、力込めて腹を切れず、情けなく悶え死にました。柾之助に至っては極に介錯を懇願されたにもかかわらず楽にしてやることもできず。泣き叫んだまま生き残ってしまいました。そして、極がもっていた三人の写真を見て、失ったものを知ったようでした。
柾之助は多分、死なない気がします。みっともなくても生きているってことは希望そのものなんだから、生きていることを否定しないでほしいなと思いました。
友の死を背負って明治を彷徨い、何かを見つけられたらと願うばかりです。
彼らは情けなくて、みっともない。
でもおそらく真実に近いところを描いている。そんな風に思いました。
切腹がかっこいいはずがないと思います。
柾之助が簪を好きな娘にあげられず、女郎にやってしまう悲しい場面や、極への恋文を預かったものを勝手に読んで破る所なども、切なかった。
そして出番少ないなーと思っていた門脇麦さん。極の元許婚で、悌二郎の妹である彼女のやった事と、それを受け止める小市慢太郎のシーンが本当に良かったです。
嫁入り前に一目会いたいではなくて、契ったあの人にもう一度会いたい、だったんやね。女としてはその嘘をついた気持ち、少しわかるよ。
門脇麦の結婚相手の小市慢太郎からは、若さを経て、若者の過ちを黙って背負えるだけの挫折を繰り返してきた大人がそこにいるという救いのような、諦観のような何かが漂っていて、よいラストシーンでした。
オダギリジョーの吹く笛の音色と、極が元許嫁に逢いにいったことの関連性はよくわかりませんでしたが、何かの伏線らしく引っかかりのある書き方だったので、そこにつながるか!という驚きもありました。
愛しのオダギリジョーについては、相変わらずの美貌でしたな、というに止めおきましょう。自分でもうっとおしいので。
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