「もう、同じキャストで、もう一回作り直してほしい。」合葬 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
もう、同じキャストで、もう一回作り直してほしい。
原作は、漫画でありながら歴史考証がしっかりとされていた。それは、元祖歴女みたいな杉浦日向子だから当然のことで、彰義隊に参加して徳川家に殉じようとする旗本たちの描き方がうまかった。その少年たちは、たとえば白虎隊などを見てもわかるように、純粋無垢に、主家のためこそはと命を投げ出す。そのあまりにも儚さは、一方では軽さと見え、また無謀としか見えない。そんな幕末の幕臣たちの流れゆくさまが、原作にはあった。あの拙いように見える絵に、その世界があった。
それを、この映画は台無しにしてしまった。
三人の演技はいい。柳楽は相変わらずの安定感だったし、岡山天音(濱田岳と星野源を足しような)は発見だった。
しかし、例えば三人が道の水たまりを通り抜けるシーンでの歩き方(履物と人物の性格の違いで、平気で踏みつけたり、飛び越えたり、周りこんだり、)に気遣いを見せる余裕があるのなら、ほかのシーンをもっと丁寧に作りこんでほしい。
音楽、セットともに、どうも馴染んでいない。
ストーリーも、作者が伝えようとしたことを理解してない。
ラストなんか、ああ、会津で死のうとしてるんだな、というそこしか行き場のない悲しみこそが肝心なのに。
あんなんじゃ、幕末の世情を知らない人にはなおさらちんぷんかんぷんだな。
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