劇場公開日 2015年8月8日

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「太平洋戦争の記憶と歳月」日本のいちばん長い日 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5太平洋戦争の記憶と歳月

2022年5月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

本作は、半藤一利原作の再映画化であり、太平洋戦争末期、ポツダム宣言から玉音放送までの知られざる真実に迫った歴史群像劇である。豪華キャストで、日本政府と軍部の対立、戦争終結に反発する若手将校の暴走など、様々な困難を乗り越えて日本が如何にして終戦を迎えたかが克明に描かれている。当時を俯瞰して客観的に捉えているので、ストーリーは理解し易く、感情移入し易い。 歴史ドラマとして観ると面白い。

しかし、自国の終戦をここまで客観的に描かれると、日本人として釈然としない。戦争の責任者はいたはずなのに、登場人物全員が、戦争に翻弄された被害者に見えてくる。更に、登場人物は、皆、家庭的で優しい。政府と軍部の対立も、国会での政党間抗争のようだ。戦時下という緊迫感に乏しい。何より、実際に最前線で戦っていた人々の姿が皆無である。自国の終戦を悲劇として踏まえ、生々しい描写で、戦争の狂気にもっとリアルに迫るべきである。

1967年公開の前作は、ドキュメンタリーを観ているような臨場感があり、画面から戦争の狂気が迸り、作品全体が熱気を帯びていた。その鮮烈な印象は今でもはっきり覚えている。戦後22年の当時、太平洋戦争は歴史ではなく、忘れ難い過去だった。

両作を鑑賞して、両作の違いの背景にあるのは、戦争からの経過時間の差であり、戦後70年以上という歳月の経過で、太平洋戦争が日本人にとって遠い記憶になってしまったと実感した。戦後をいつまでも太平洋戦争後にするために、我々に出来ることは、当時を題材にした作品をたくさん観て、戦争の狂気の記憶を保持し、決して忘れないことであろう。

みかずき
死亡遊戯さんのコメント
2022年9月10日

初めまして。
先日はコメント有難うございました。
また、たくさんの共感も有難うございました。

先月ようやく1967年版を映画館で観る機会があり鑑賞したところ過去観た映画ベスト10に入っても良い程の傑作に驚き、とにかく2015年版との比較レビュー書かれている方を探した所、みかずきさんが素晴らしいレビューを書いておられたので共感した次第でした。

フォローさせて頂きました。
宜しくお願い致します。

死亡遊戯
みかずきさんのコメント
2022年5月6日

CBさん、コメントありがとうございます。

太平洋戦争が終わってから、70年以上経ってしまったので、
太平洋戦争は、過去から歴史になってしまったんだと思います。

だから、客観的な描写はできますが、肝心の忘れてはならない戦争の狂気がトーンダウンしていくんだと思います。

では、また共感作で。

-以上-

みかずき
CBさんのコメント
2022年5月5日

> 戦争の責任者はいたはずなのに、登場人物全員が、戦争に翻弄された被害者に見えてくる
なるほど。たしかに。

CB