「様々な間違いの解釈に 気づかせてもらった映画。」日本のいちばん長い日 年間100本を劇場で観るシネオさんの映画レビュー(感想・評価)
様々な間違いの解釈に 気づかせてもらった映画。
戦後生まれの僕たちは、
戦争のことを
いろんな情報が交錯して、
時に間違った解釈をしていることが多い。
だから戦後70年の節目に、
このような映画が上映されるのは、
とても意義のあることだ。
子供の頃先生から、
日本は戦争犯罪国だから
無条件降伏したのだと
教えられたことがある。
また、ポツダムの受諾を
さっさとしなかったから、
広島や長崎に原爆が落とされたのだと
勝手に思っていた。
けどこの映画で、
たくさんの間違いに気づいた。
戦争を強行的に終わらせようとした米国が、
原爆での無差別爆撃を行い、
ソ連までを利用して、
日本をとことん追い込んでいった。
それは狂気にみちた戦略だった。
そこまでされて、
昭和天皇が終結の意思をもっても、
内部はまだ揉めている。
おのおののエゴのぶつかり合いで、
どんどん時間が過ぎてゆき、
本土決戦の恐怖に怯えながらも、
普通の人が亡くなっていく。
あっけない開戦だけど、
負ける状態で終わらせることが、
こんなにも難しく、
犠牲を伴うことだったなんて。
そしてあの晩、
陸軍のクーデターが
成功していたらと思うとぞっとする。
もう一つ原爆が
落とされていたかもしれないし、
ソ連に北海道を制圧されたかもしれない。
今の日本は
なかったかもしれない。
戦争をきれいに終わらせるために、
様々な男たちの美学があり、
今の平和に繋がっていることを知った。
山崎さんの
鈴木内閣総理大臣は素晴らしかった。
戦争を終わらせるためだけに組閣された、
最高齢の総理大臣。
したたかに振る舞う、
日本の命運を担う政治家を、
時にユーモラスに時に凛と描き
深みを与えた。
役所さん演じる
阿南陸軍大臣も圧巻だった
天皇陛下のご意思と
煮えたぎるような陸軍将校達の狭間で、
苦悩しながらも真の太い人物像が見事だった。
そして本木さんの昭和天皇。
この映画のほとんどを支配しているのは、
慈愛に溢れた天皇像だった。
戦争への痛恨を背負い、平和的降伏への決断。
決して神ではなく、人間としての葛藤を描いた。
彼が踏み込んだチャレンジブルな佇まいは、
初めて天皇陛下をリアリティを感じた。
歴史に残る名演だと思う。
映像とストーリーが
スタイリッシュでスリリング。
この長い尺で登場人物の多い中、
全く飽きさせない静と動のコントラストに
とてつもない演出のチカラを感じた。
玉音放送後の日本を描かなかったのも、
テーマが明確になった。
決して風化させてはいけない
歴史の壮絶なドラマが、
1秒1秒に刻まれている。
若い人たちが
安全保障関連法案反対に立ち上がった今、
そんな未来を担う人たちに、
観て欲しいと切に想う。