「基礎工事がいい加減な映画は破綻する。」怒り bashibaさんの映画レビュー(感想・評価)
基礎工事がいい加減な映画は破綻する。
原作者は「怒」という文字を最初と最後に据えて、作品に統一感を与えようとしたのでしょうが、その「怒」の一文字が何に対する「怒」であるのかが、最後まで不明でした。まさか、沖縄の米軍基地に対する「怒」ではないでしょう。私は原作を読んでいないので詳しくは判りかねるのですが、冒頭で、何故、女性が殺され、何故、「怒」の一文字が壁に殴り書きされていたのか、未だに判りません。原作者の単なる思い付きのような気がしてなりません。単なる思い付きに尾鰭が付いて出来上がったのが、この原作のような気がします。
不満はまだあります。登場人物のほぼ全員が何かしらの、重い宿命を背負っているのです。原作者の安っぽい作為を感じます。同性愛に発達障害に借金苦に暴行・・・。ひとつひとつの人物造形に手間をかけるのが面倒くさかったのか、登場人物は不自然なまでに過剰な重荷を背負わされています。ここまで、不幸が連鎖していくと、ちょっと、浮世離れした印象を受け、私は白けました。
また、終盤、宮﨑あおいと広瀬すずが何故か絶叫するのですが、あの場面で、何故、絶叫するのかが、皆目、判りませんでした。ただ、うるさいだけで、蛇足のような気がしました。
うるさいのは絶叫だけではなく、坂本龍一の音楽も大仰で、場内のスピーカーが壊れんばかりの音をがなり立てていました。この種の音楽ははっきり云って、不要でしょう。
全てにおいて、過剰なインフレーションを起こしている駄作、役者の熱演が空回りしているだけの作品、少なくとも私には、そのようにしか思えませんでした。
作劇術に関心のある人には格好のテキストになるでしょう。勿論、反面教師的テキストとして。
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