「原曲のイメージとはかなり異なる」風に立つライオン えのきちさんの映画レビュー(感想・評価)
原曲のイメージとはかなり異なる
『風に立つライオン』を鑑賞。
原作はさだまさしの同名曲を元に、さだ自身が小説化したものとなっており、監督は三池崇史、主演は大沢たかお。
大学病院からアフリカケニアの研究施設に派遣された日本人医師航一郎(大沢たかお)は現地赤十字病院からの要請で医師として働くこととなる。そこで迎えた患者は麻薬を打たれ兵士として戦場に立たされ負傷した少年兵たちだった。
元々はさだまさしが長崎に実在する医師にインスパイアされ作詞作曲をしたものだが、小説化を熱望したのは大沢たかおだという。つまり、主演である大沢たかおは今作に対する想いは人一倍強いというわけだ。
それは演技からもひしひしと伝わってくるものがあり、少々浮くほどの気迫である。
アフリカに派遣されたのが1987年。
そして2011年の東日本大震災とを結びつけるあたりは強引すぎる気もするが、テーマとなっている「命のバトン」を伝えるにあたってはわかりやすいアプローチであるとも言える。
では映画としてどうかというとイマイチぱっとしない印象。現地での厳しい現実はしっかりと描かれているし、少年たちの心の傷や、そこに携わる人々の真剣さも素晴らしい。しかし、ストーリー自体があまりにも理想的すぎるのがいけない。いわゆる綺麗事ばかりなのだ。
航一郎の志は素晴らしく、行動力含め全く申し分ない。
同じく看護師として働く石原さとみのケニアにいるとは思えないほど真っ白なお肌が気にはなるものの、これも理想的な働きを見せる。
登場人物がどうにも優等生すぎて人間らしさが感じられないので、イマイチ感情移入しにくいのである。
原曲が好きな私としてはもっと壮大な景色や映像が観られると期待していただけに、少々残念な出来だと感じてしまった。