「万国受けする内容+その国独特の背景=傑作が生まれる」女神は二度微笑む 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
万国受けする内容+その国独特の背景=傑作が生まれる
私事ながら…
1年4ヶ月に渡る癌闘病の末、つい先日、母が亡くなりました。
ここ数日はまともに映画も見れませんでしたが、少し落ち着いたので、久々にじっくり腰を据えて鑑賞。
前々から気になっていた本作は、世界一の映画大国インドが放つ、上質のサスペンス・ミステリー!
地下鉄で毒ガスによる無差別テロが発生したインドの大都市コルカタ。
2年後、行方不明の夫を探しに僅かな手掛かりを頼りにこの地へやって来た妊婦ヴィディヤ。
地元の警官の協力を得て、夫の行方を探すが…。
歌も踊りもコメディもナシ。
あのインド映画独特の作風を封印した、シリアスな第一級のエンターテイメント。
インド映画はクセがありすぎてちょっと…という方でも問題ナシ!
まるでハリウッド作品を見ているような…いや、ハリウッドもひれ伏すほどの完成度・見応えに引き込まれる。
単なる夫探しのサスペンス・ミステリーかと思ったら、どんどんスケールが広がっていく展開。
夫の行方を探すヴィディヤの前に立ち塞がる国家の壁。
夫は2年前のテロ事件に関与の疑いが…。
サスペンス・ミステリーから陰謀スリラーへ。
そして、文字通りの驚愕のラストへ…!
ネタバレ厳禁映画なので、詳しく語れないのがもどかしい。
一度見終わってから考えると、あちこちに伏線が巧みに散りばめられている。
それらが繋がるラストのカタルシスは、さながら「ユージュアル・サスペクツ」。
ちょっと触れるが…、序盤、コルカタに着いたばかりのヴィディヤがタクシー運転手との何気ない会話“人の二面性”がいきなり大きな伏線であった。
本作最大の見所の一つが、すでに多くの方が挙げている通り、主人公ヴィディヤを演じたヴィディヤ・バラン。
何と美しく魅力的な女優!
夫を探す身重の体なので弱々しいヒロインかと思いきや、タフで凛々しく、ネタバレ厳禁のラストはこれまた文字通りの“強い女”。
ヒロインに協力し淡い想いを抱く地元警官役の好演、怪しそうな登場人物の中でも、パッと見冴えない風貌の殺し屋がゾッとするほど不気味!
画面から空気が伝わって来そうなコルカタの景観も作品のムードの盛り上げに一役買っている。
万国受けする内容+その国独特の背景と言うと、見ていたら、ジャンルも製作国も違うが、イラン映画「別離」を思い出した。
万国受けする複雑な人間模様とイラン独特の宗教観が見事に合わさった素晴らしい作品であった。
本作はハリウッドリメイクが決定しているとか。
ハッキリ言って、これ以上の作品が出来るとは思えない。
(そう考えると、スウェーデン「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」→ハリウッド「ドラゴン・タトゥーの女」は奇跡の作品であった)