劇場公開日 2015年10月10日

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「●事実は映画より奇なり」ヴィヴィアン・マイヤーを探して うり坊033さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0●事実は映画より奇なり

2015年10月29日
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好きだわ。知られざる才能の発掘物語って。

なんて魅力的な写真を撮るんだろう。そこには、市井の人々のドラマが切り取られている。笑顔。苦悩。微笑ましさ。誇り。瞬間瞬間の美しさ。彼女はそれを見逃さない。

そして、なんて孤独な人生だったんだろう。類稀なる才能と引き換えに、彼女は幸せを写真の中に閉じ込めた。天才と変人は紙一重だ。人の能力の9割方を写真に取られた分、最低限の生活を強いられた。

天才であるがゆえ、ほかのことは不器用な芸術家って多い。店を破壊するほど酔っ払って暴れる役者。唯一の理解者をストーカーのように攻撃するミュージシャン。出自のコンプレックスから書くことしかできない小説家。それでも普通は、まわりが才能に気付いてフォローする。

彼女だけが自身の才能に気付いていたから、膨大なポートレートを残したのかもしれない。こんな日が来たときのために。

「被写体が身構えない距離に誘う。彼女はこの距離感を知っていた。」
プロが唸る。

「彼女にとって作品は子供。子供を発表したりしないでしょ。」
そうかもしれない。

歴史家、ジョン・マルーフの偶然の出会いと、ネット社会のなせる技。
埋もれた才能は権威だけが発掘するモノではない。
ある価値観が、国を超え世代を超え共感されてパワーになる。
そんな世の中は、ちょっとステキでワクワクする。

うり坊033