「誠実さは身を滅ぼすか?身を助くるか?」オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分 momokichiさんの映画レビュー(感想・評価)
誠実さは身を滅ぼすか?身を助くるか?
クリックして本文を読む
最初から最後まで、映像が「車の中だけ」という映画がかつてあっただろうか。今にも出産しそうな浮気相手を慰め、自宅でサッカー観戦を約束していた子供に話を合わせ、思い切って妻に状況を暴露しその後の発狂に対応、明日の一世一代の大仕事を代わりに遂行する不安げな同僚へ指示をおこない、仕事の障害が見つかればその担当者と交渉をおこなう、、、、。主人公以外の登場人物は車のコンソールに表示される相手の名前と車中に響く電話の声しかなく、一切映像には映らない。でもまさに相手の状況がリアルに浮かび上がってくる。きっと髪振り乱して怒っているんだろうな、少しほろ酔いででも不安げにいるんだろうな、1階でママに見えないところから受話器握りしめてさびしく電話してるんだろうな、、など。
そもそもこの事態になった発端は主人公の「バカ正直なほどの誠実さ」。出張先で一夜だけ供にした女性の出産に立ち会うという気さえおこさなければこんなことにはならなかった。ただ、その一方で主人公のこれまでの誠実さが身を助けてもいる。代わりに大仕事をやろうとする同僚、市役所の担当官、急きょ依頼した作業員、等。これまでの彼の誠実な実績があったからこそ。
最後は、職も家族も家もなくした彼にたったひとつ希望が訪れたシーンで終わる、見事なクロージングである。
コメントする