「【今作は、銃乱射事件で”亡くなった息子”への喪失感から世捨て人になった男が息子の曲を聴き、その想いを息子を思わせる若者とバンドを組み、曲を演奏する事で再生していく様を描いた涙が零れる音楽物語である。】」君が生きた証 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【今作は、銃乱射事件で”亡くなった息子”への喪失感から世捨て人になった男が息子の曲を聴き、その想いを息子を思わせる若者とバンドを組み、曲を演奏する事で再生していく様を描いた涙が零れる音楽物語である。】
ー 最初に敢えて書くが、私は世界で多発する銃乱射事件の犯人や、無差別殺人者は当然断罪されるべきであると思う。だが、気になるのは犯人の親や知人が犯人と同様の様に非難される事には違和感を感じている。だが、実際には犯人の親や知人は、その町では住めなくなったり、職も失っているケースが多い。-
■やり手の広告宣伝マンのサム(ビリー・クラダップ)は大きな契約をまとめ、祝杯を挙げようと息子・ジョシュ呼び出す。
だがジョシュは直後に大学で起きた銃乱射事件により【亡き人】となってしまう。
2年後、サラリーマンを辞め、ヨットで一人暮らすサムが別れた妻エミリー(フェリシティ・ハフマン)から手渡されたのは、生前にジョシュが書いた曲の歌詞とデモCDだった。
それを聞いたサムは、町のクラブでその歌を歌い、観客として聞いていたクエンティン(故、アントン・イェルチン・・。)に、”感動した、一緒にバンドをやろう!”と言われる。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・真夜中に今作を鑑賞したのだが、奏でられる曲の良さと少年の悩みを綴った詩を聞いて、序盤は”良い、音楽映画だな。”と、心を揺さぶられながら観ていた。
当然、サムの息子ジョシュは被害者だと思い込みながら・・。
・サムは、観客の前で演奏する前に嘔吐するクエンティンに優しい。そして”逃げるな”と言い、彼に興味を持っている女性の観客の所へ行って、話て来いと言うのである。まるで、親の様に。
■衝撃だったのは、サムと元妻エミリーがジョシュの人殺しなどと多数の落書きがある墓を懸命に清掃するシーンでは、思わず目を見張ってしまった。
ジョシュは、6人の罪なき生徒の命を奪った犯人だったのだ。
だが、このシーンを見て嫌悪感は起きずに、何故にサムがジョシュの歌をクラブで飛び入りで歌ったのかが氷解し、涙が零れてしまったのである。
そして、その後に奏でられる、”天使と悪魔”のジュシュが書いた詩の意味が、分かった様な気がしたのである。
・当然、クエンティンはその事を知りバンドを辞め、息子のガールフレンドだったケイト(セレーナ・ゴメス)は人生を狂わされたと言ってサムを罵ってその場を去って行くのである。
だが、サムは彼と良く行っていた楽器店デル(ローレンス・フィッシュバーン)で、彼が欲しがっていたギターをプレゼントし、店で”これは、2年前に銃の乱射事件を起こした私の息子が作った歌です。”と言ってその哀愁を帯びた、行き先に迷っている少年の想いが込められた歌を恥じる事無く、見事に謳いあげるのである。涙腺が、崩壊したシーンである。
<銃乱射事件で”亡くなった息子”への喪失感から世捨て人のようになった男が息子の曲を聴き、その想いを息子を思わせる若者とバンドを組み、曲を演奏する事で再生していく様を描いた涙が零れる音楽物語なのである。>