「すごく良かったんだけど、良かったからこそ。」君が生きた証 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
すごく良かったんだけど、良かったからこそ。
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すごくいい映画だった。主人公サムが多くを語らないところがいい。彼はただ、亡くなった息子に寄り添おうとしただけ。そんなシンプルさがいい。
優しいだけの作品はあまり好みではないが、ゆっくりと立ち直っていくサムの姿が気持ちよかった。
それだけに、中盤に訪れる「真実」にはがっかりしてしまったんだよね。
いつもならそういった映画の中の転換は好きなんだけど、今回ばかりは最後まで気持ちよく観させてほしかった。
息子の登場シーンはほとんどない。ないからこそサムの息子についてほとんど分からない。分からないからこそ自然とクエンティンが息子にかぶって見える。
サムの中でそれがどれほどかは分からないけれど、クエンティンの中に息子を見ていることは確かだろう。観ているコチラ側のその心地よさが終盤に失われてしまうのがやはり残念でならない。
薄々、息子が乱射犯である可能性は考えていたので、頼むから違ってくれと祈りながら前半を観てたよね。
そしてお墓のシーンが来たときに、ああそうなったかと激しく落胆してしまった。
チラッと見えた息子に、そんな感じが全くなかったのが怖いんだよね。悩みはあったのかもしれないけれど、孤立したりしているようでもなかったしね。
アメリカの乱射犯って、そんな感じなのかな。なぜあの人が?みたいな。
少ない情報ながら音楽を楽しむ普通の青年に見えたからこそ、やはり「真実」は残念な気持ちになる。
後半の残念さばかり書いたけれど、いい作品だったのは間違いない。
ウイリアム・H・メイシーは映画の監督をもっとやってもいいんじゃないか。
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