劇場公開日 2019年7月12日

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「思いつきの是非」トイ・ストーリー4 アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5思いつきの是非

2019年7月13日
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鑑賞方法:映画館

2D 吹き替え版を鑑賞。トイ・ストーリーの1作目が公開されたのは 1995 年のことで、スティーブ・ジョブズが PIXAR 社を設立してから 10 年後のことであった。同社初の公開作品で、史上初の全編フル CG という画期的な作品であり、それまでの 10 年間は視聴に耐える作品が生み出せず、ジョブズは毎年 10 億円ほどを注ぎ込んでいたが、初作の収益が 140 億円程あったため、10 年分の投資を完済してもまだ 40 億円程の利益があったらしい。この年、我が子らは長男が5歳で、ビデオになってから何度も一緒に見て、長女はまだ生まれていなかった。

5年後の「トイ・ストーリー2」の時は息子が 10 歳、娘が5歳で、2人を映画館に連れて行って鑑賞し、更に 11 年後の「トイ・ストーリー3」の時は、息子が 21 歳、娘が 16 歳で、この時も2人を連れて見に行った。特に3は大人の鑑賞にも耐える名作で、思わず涙ぐまされるほどの感動的な作品であった。

あれから更に9年が経ち、我が子らは2人とも親元を離れて就職しているため、本作はぼっちで観に行った。3を上回る感動作を期待したのだが、シリーズ物の暗黒面に落ちたのでは、と思わされるほどの肩透かしを食らわされた感じを受けた。

新規性を出すべく、脚本を弄りすぎて失敗した作品はハリウッド映画には珍しくない。エイリアンの3作目や4作目、マトリックスの3作目や、パイカリの3作目、ターミネーター・ジェネシス、Star Wars の Ep. 8 など、作り直せと言いたくなるほどの劣化した内容には立腹を禁じ得なかった。

本作もまた、やってはいけないことをやってしまった感が拭えない。それは、アンディの価値観や立ち位置の革命的な変更であり、賛否両論があるだろうが、個人的には、これまで積み上げて来たものを粉々にしてしまったような喪失感が我慢できなかった。

新メンバーのフォーキーは、持ち主のボニーが使い捨ての先割れスプーンなどを使って自分で作ったお気に入りなのだが、自分をゴミだと思い込んで頻繁にゴミ箱に入ろうとするなど、自殺願望を持つようなウザいキャラである。そんなフォーキーが持ち主のボニーからはぐれてしまったので、連れ戻そうとするウッディの熱血と実直さが、この物語を牽引する原動力になっていた訳なのだが、あのエンディングでは、ウッディは自分の個性を形成する熱血や実直さを捨ててしまったに等しい。自己犠牲まで描いているのに、これはあんまりである。(つД`;)

自分を送り出した組織に背を向けるという話は、ジェームズ・キャメロンが最も得意とする話で、「ターミネーター2」や「エイリアン2」から「タイタニック」や「アバター」まで、大雑把に言ってしまえば、全て同じような話の骨格を持っている。個人的に、そういう話にはウンザリしていたのに、これでまた増えてしまった感が否めない。

笑えるシーンも多く、映像のクォリティも申し分ないどころか、電気スタンドのボー・ピープなどは、今までにないほど魅力的に描かれていただけに、勿体ないという思いが尽きない。3の監督だけを他者に譲ったジョン・ラセターが、3の出来の良さに焦ってしまって、復帰作でこういうことをしでかしてしまったのではあるまいか、などと、様々な思いが頭の中を駆け巡る。

音楽は第1作から担当しているランディ・ニューマンが相変わらず見事なスコアを書いていた。この音楽でなければトイ・ストーリーの世界は醸し出せないに違いない。演出は流石にこの世界を生み出したラセター監督だけのことはあると思われたが、あの終わり方が全てを台無しにしているとしか思えない。
(映像5+脚本1+役者3+音楽5+演出5)×4= 76 点

アラ古希