「嘘は真とならず」カプリコン・1 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
嘘は真とならず
Blu-rayで鑑賞(吹替)。
一時、アポロ11号の月面着陸は捏造で、月面での様子はセットで撮影されたものであると云う陰謀説を半ば信じ、面白がって楽しんでいたことがある。元々、そう云う陰謀論や歴史における異説の類が大好きだったからだが、本作の存在を最近知り、興味が湧いたのは当然の成り行きであった。
火星着陸の芝居を強いられる宇宙飛行士の葛藤と、違和感に気づき真相に迫る記者の奮闘が交互に描かれる。徐々にサスペンスが増幅され、スリル炸裂のクライマックスへなだれ込む。
製作の背景にはウォーターゲート事件に端を発する政治への不信感があったのではないかと邪推したくなるほど、権力の仕掛ける陰謀と個人への容赦無い生死を問わぬ妨害が描かれた。
科学の発展のためと嘯き、アメリカ、ひいては世界を騙す壮大な「嘘」をつくり出した者たちの姿を通して、当時の(今もか?)のアメリカ政府を皮肉っているのではないかと感じた。
結末の後は観る者の想像に委ねられているが、想像を逞しくさせる終わり方だ。かなりの大事になりそうであることは確かだ。アメリカの威信は地に落ち、世界は大混乱に陥るだろう。
本作を観て思ったのは、嘘をついたら最後、それは決して真にはならないと云うこと。どれだけ隠してどれだけ誤魔化しても必ず何処かに綻びが生じ、隠し通すことなど出来やしない。
よって、アポロ11号の月面着陸も真実なのではないかと思えた。だがもしかすると、そう云う印象を持たそうとする意図で本作はつくられたのではないか、とも勘繰りたくなった。
本当のところは結局分からないが、いずれにせよ本作は、味わい深いポリティカル・サスペンスであることは間違い無い。
[余談]
クライマックスのプロペラ飛行機とヘリコプターのスカイチェイスはかなりの臨場感と迫力を伴う、スピーディなアクションシーンで手に汗握った。思わず「ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング」を連想した。連想と言えば、劇中に7月2日の日付が登場し、プロペラ飛行機の持ち主は空からの農薬散布を生業とし、さらに本作が宇宙に関連する作品である点から、ローランド・エメリッヒ監督の「インデペンデンス・デイ」を思い浮かべずにはいられなかった。