劇場公開日 1977年12月17日

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「今日人類は初めて火星に着いたよ」カプリコン・1 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0今日人類は初めて火星に着いたよ

2019年8月1日
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鑑賞方法:DVD/BD

怖い

興奮

19××年。
人類初の火星への有人飛行計画。
全世界が見守る中、“カプリコン1号”は火星へ向けて飛び立った…!

…が、その舞台裏で、思わぬ事が起きていた!
発射数分前、パイロットたちは誰にも知られる事無くロケットから降ろされた。
砂漠のとある基地へ。その中には、ロケットや火星と思われるセット…。計画責任者から、衝撃的な説明を聞かされる…。
発射直前になってロケットにトラブルが発生。計画が遂行出来なくなった。
が、今更中止なんか出来ない。莫大な予算が掛けられ、その使い道に対し批判の声も。
そこで苦肉の策。
ロケットは無人のまま打ち上げ、管制室とのやり取りも船内や火星着陸の模様もこのセットで撮影して行う。
そう、あたかも本当に火星に行ったように、絶対にバレてはいけない、全世界を騙し通さなければならない、壮大な“でっち上げ”計画…!

勿論、パイロットたちはハイハイと従えない。
パイロットとしての誇りもあるし、そんな嘘に加担出来るものか。
何より、家族に嘘など付けない。
が、家族を人質に取られ…。
地球との“交信”の日。ずっと反発していたパイロットの一人が本当の事を言うかもしれないと思われたが…、“演じ切る”。

“火星飛行”は滞りなく計画通りに。後は地球への帰還のみ。
再び、トラブルが!
地球への再突入の際、ロケットに異常が起こり、爆発…。
最後の最後になって、計画は失敗。
となると、パイロットたちは…?
ロケットが爆発したのだから、パイロットたちは存在してはならない。
身の危険を感じたパイロットたちは脱出・逃亡。
そんな彼らに、追っ手が迫る…。

未だ人類は火星へ有人飛行は実現してないので、SFである。
が、アポロ計画のようにリアル。宇宙開発計画のドラマ。
真相に近付こうとした記者の車のブレーキが壊され、パイロットたちにヘリが迫り、命を狙われるスリリングな隠蔽サスペンス。砂漠でパイロットたちの決死のサバイバル。アクション的な見せ場も充分。
そして、世界を騙す壮大なヤラセのブラック・コメディでもある。
見る人によってそれぞれ様々なジャンルを感じ取れ、驚きの設定ながらエンターテイメント性もしっかり抑えたピーター・ハイアムズの手腕はキャリアベストと言っていい。
運命のラストまで、飽きさせずグイグイ引き込む。

本作公開は1977年。その僅か数年前の1969年に、人類初の月面着陸の偉業を達成した。
…しかし、今も尚捏造説が囁かれる。おそらく本作の発想も。
かと言って、別に本作は月面着陸を否定するような作品ではない。
国家に振り回されるパイロットを描き、寧ろパイロット寄りに感じた。
それに、人類の偉業が実は嘘っぱちだったなんて、思いたくもないし信じたくもない。
人類の偉大な挑戦やパイロットたちの言葉を信じたい。

近大