「表現の自由。」ジミー、野を駆ける伝説 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
表現の自由。
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エリックを探して、天使の分け前、ではクスッと軽やかな笑いを
醸し出したK・ローチ監督の新作がアイルランドに還ってきた。
名もなき労働者階級の活動家J・グラルトンと彼が建てたホールを
巡る物語だ。彼のホールは音楽・ダンスだけでなく教育・スポーツ・
社会政治など多岐に渡り村人が情報交換できる社交の場だったが、
有力地主や神父の怒りを誘発する。彼らにとって労働者は、ただ
黙々と働いて学歴も得ず自由や権利を主張しないことが望ましい。
そんな階級に波風を立てるジミーが許せないのだ。しかし村人は
ホールの存在で変わった。ジミーが帰郷すると、すぐさまホールの
再開を直訴する。10年ぶりにホールを再開するジミーだったが…。
まるであの'80年代のダンス映画「フットルース」を連想させられる。
時代背景も国柄も若者文化も違うが、ダンスを禁止された若者達が
転校生(若き)K・ベーコンのステップに酔いしれる。テーマソングも
若者1人1人に呼び掛ける歌詞が印象的だった。悪しき文化、風潮だと
敬虔人は語るが馬小屋で娘に鞭打つ父親が果たして愛護者だろうか。
自由表現や娯楽の重要性が総ての人間に必要不可欠ではと問いかける。
優しく温かい語り口の中に鋭い指摘が何度も入るさすがのローチ節。
実話ということでその終焉は切ないが、拳を掲げジミーに宣言する
若者たちの夢と希望に満ちた未来への眼差しが何よりの救いである。
(裁判もなく国外追放された庶民の英雄。母親の落胆は如何程だったか)
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