「平和は管理と同意が不可欠。」ズートピア 全竜(3代目)さんの映画レビュー(感想・評価)
平和は管理と同意が不可欠。
高度な文明を基に肉食動物と草食動物が隔たりも無く平和に暮らす理想の街《ズーランド》に憧れ、ウサギ界史上初の警察官に成れたホップスは、正義感に燃え上がり、意気揚々と任務に着く。
しかし、花形の捜査課を仕切る大柄アニマルポリスからは相手にされず、駐車違反の取締りばかり回される。
悶々と切符を切る日々の中、肉食動物ばかり失踪する事件が次々と発生。
使命感が着火したホップスは、ふとした事から知り合った詐欺師のキツネ・ニックスとコンビを組み、真相を暴いていく物語。
ディズニーアニメは画力だけでなく、笑いもクオリティが高くて、けっこう観に行くのだが、公開当時、東京長期出張などで忙しい仕事が更にハードになり、見逃したままだった。
ようやくDVDで観賞できたが、銀幕で堪能できなかったのを悔やむ見事な完成度である。
可愛らしい主人公を筆頭に、大小、種類を問わず、様々な動物達が人間と同じ様な生活をするユーモラスな世界観と、「夢を諦めないで♪」と前向きな主題歌に包まれ、微笑ましい喜劇やと思いきや、かなり哲学的な構造に唸り、感心してしまった。
犯人を追う最中、発見された失踪者は皆、凶暴化しており、肉食動物の本来の姿なのか?!と草食動物達は脅え、肉食動物達を街から追放しようと対立する憎悪は、差別やテロに恐れ、何も信用できなくなっている人間社会そのものである。
害を与える邪魔者は排斥し、自分達が良ければ其れでイイのだと云う利己的思想は、正にトランプorクリントンで揺れているアメリカを痛烈に皮肉り、笑いつつも、五輪を控えた日本も決して他人事ではない。
平和を維持するには、何を我慢
し、何を叫べば、正義と呼べるのか?!
時事問題に対するメッセージに説教臭さは無く、娯楽要素をキチンと優先した面白さに仕上げた凄さは、ディズニーアニメの真骨頂と云えよう。
プロモーションで幾度も煽っていた《意外に深い!》の言葉を疑っていただけに、其の真意に驚く価値は、大いに有る作品だと今更ながら綴る秋の宵である。
では最後に短歌を一首
『街を跳び 種蒔く目覚め 問うバッジ 爪に耳立て 夢ぞ花咲く』
by全竜