「この不条理と矛盾は誰が晴らすのか」殺されたミンジュ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
この不条理と矛盾は誰が晴らすのか
一人の女子高生ミンジュが殺された。誰に知られる事も無く。
1年後、殺人の容疑者たちが謎の武装集団に拉致監禁、制裁を加えられる…。
鬼才、キム・キドクならではの不条理バイオレンスが炸裂。
水責め、ハンマーで指を潰し、釘の付いたバットで頭部を殴打、全身に高圧電流…。
これぞ韓国バイオレンス!…と言うべき衝撃作だが、正直言うと、ちょっと期待してたものと違った。
殺されたミンジュと武装集団の一捻りある関係性、その謎が徐々に明かされる壮絶な復讐劇と思っていたのだが、“殺されたミンジュ”事件はきっかけに過ぎず、根はもっと深く。(後から知ったけど、原題と邦題は全然違う)
格差社会、貧困…韓国現代社会の暗部を抉る。
まんまと罪から逃れる容疑者らやデカイ態度でのさばる奴らの不快さ。
底の底で喘ぎ苦しむ人々の声は誰にも届かない。
自分たちの声を聞け。
自分たちの苦しみを知れ。
自分たちの哀しみを知れ。
が、その為の手段、暴力による報復は、負の連鎖でしかない。
制裁は度が過ぎ、いつしか加害者が被害者に、武装集団のリーダーの異常なまでの行動に遂には仲間内で…。
暴力の不条理、社会の矛盾、何が善で何が悪か、人間の本性…。
キム・キドクの訴えは深く、痛い。
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