劇場公開日 2015年5月23日

「ある疑問がなければ、高評価」リピーテッド 悶さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ある疑問がなければ、高評価

2023年12月23日
PCから投稿

【鑑賞のきっかけ】
本作品は、2014年に制作され、日本では2015年に劇場公開されているとのこと。
また、原作小説があり、海外ではベストセラーとなったようです。
でも、全くその存在を知りませんでした。
このたび、動画配信されており、自分の好きな「ミステリ」作品ということで興味を惹かれ、観賞してみました。

【率直な感想】
<記憶喪失がテーマ>
それにしても、制作総指揮リドリー・スコット、主演ニコール・キッドマン、共演コリン・ファースと、豪華な顔ぶれ。
どうして、映画好き、ミステリ好きの自分のアンテナに引っかからなかったのだろう?
──という疑問はさておき。

ニコール・キッドマン演じる主人公、クリスティーンは、記憶障害があるという設定。
就寝して、翌朝目が覚めると、前日の記憶が失われている。
つまり、1日しか記憶が持たない日々を送っている。
きっかけは、20代の時に遭遇した大きな傷害で、その衝撃の前の記憶しかない、彼女。
毎朝、夫と名乗るベン(コリン・ファース)から、1日だけの記憶だという説明を受けている。
いつしか、彼女は、40代になっていた。
そんな彼女は、2週間くらい前に、治療を引き受けてくれるという医師・ナッシュと出会っていた。
その後、毎朝、ナッシュから電話があり、デジタルカメラの隠し場所を教わる。
そこには、彼女の前日の自分へのメッセージが映像として記録されていた。
本作品の原題は、「Before I Go to Sleep」で「私が眠りにつく前に」であるが、彼女の、
夜寝る前に、一日の記憶をデジタルカメラに語りかける毎日ということから来ていると思われます。
本作品での一番大きな謎は、記憶障害のきっかけとなった傷害を負わせた人物、つまり犯人は何者かということ。
この謎解きの展開の中で、次々と意外な事実が判明していき、ある企みが明らかになっていく展開は、かなり楽しむことができました。

<疑問な点があり>
彼女の日常は、夫が仕事に出た後は、家の中で過ごしているようなのですが、彼女の肉親、特に、両親のことが全く触れられていないのは、不思議に感じました。
傷害を負った事件当時、20代なら、両親も兄弟もいなくて、天涯孤独ということは考えられず。
そもそも、朝、夫から「1日しか記憶が持たない」との説明を受けたら、私なら、自分の肉親はどこにいるのか、尋ねますけれど。
誰だって、真っ先に気にするのは、自分の生まれ育った家族のことではないでしょうか。
それが全く触れられないのは、違和感を覚えました。
彼女の過去の写真を貼ったアルバムがあり、そこから説明を受けていたのかもしれません。
でも、自分が何者なのかを知りたければ、日本なら、戸籍や住民票があります。
この映画の舞台がイギリスかアメリカなのか、はっきりしませんが、そうした身元確認の書類は役所にあるはずで、彼女はなぜそうした書類での確認をしないのでしょうか。
というか、そもそも彼女は身分を証明する書類を持っていないのでしょうか?
日本なら、健康保険証とか、運転免許証とか、マイナンバー通知書(又はカード)とか、パスポートなど…。
夫を名乗るベンや、医師のナッシュから、自らの情報を得るだけで、自分が何者かについて積極的に調査しないクリスティーンは、成人としては不完全な人間にみえてしまいます。

【全体評価】
ミステリ的な意外な事実が次々と判明していく展開には、面白さを感じるものの、上記の「生まれ育った家族」に全く触れていないのは、どうしても不自然さを感じざるを得ませんでした。
これがなければ、もっと高い評価をしていただろうに、とちょっと残念な作品に終わってしまいました。

悶