「ゴダール魔術のシュールな世界」さらば、愛の言葉よ odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
ゴダール魔術のシュールな世界
ストーリー性は奇妙な男女の会話と犬が出てくるだけで特にない、政治や哲学、宗教、芸術に至るまで、まるで禅問答のように抽象的で断片的なセリフやモノローグが繰り返されます。
やはり興味深いのはヌーベルバーグの巨匠ゴダールですから映像表現の奇抜さでしょう、わざわざ素っ裸で語らせています。
出てくる映像も感性で選んだものでしょう、頻繁に登場するワンちゃんもゴダールの愛犬、犬は自分より人間を愛する唯一の動物だとダーウィーンの言葉を引用していました。
煙草は出てきますがお酒や食べ物は出てきません、アパッチ族は世界は森と言っていたと語り森や川、生い茂る木々の葉や朽ちた落ち葉など自然描写が多いですね。
反面、都市も嫌いなわけではなく乗り物も多く車や電車、船は出てきますが飛行機は出ず、唯一出てくるヘリコプターはすぐに墜落炎上、花も萎れかけた花瓶の花から生き生きしたチューリップと対照的、人類の最大の発明はゼロと無限大と男が言うと女はセックスと死よと言う。女は人を苦しませない、もたらすのは退屈と死だけと言う。自死願望を揶揄するかのようなバスタブの流血映像もしばしば、テレビ映像も家のシーンで多く出ますが映画を映していたり砂嵐状態だったり、裏テーマは死とか終焉なのかもしれません。
全ての思考はウンチの中に帰着すると訳の分からない下ネタジョークまで入るから、もはや難解を超えたゴダール魔術のシュールな世界。
3D作品なのだが残念ながら2Dで鑑賞したからゴダールの意図が十分に伝わったかは分かりません。アバターに刺激を受けたのか3D手法に映像作家としての興味をそそられて作ったのでしょう、映画の中でも羽根ペンや絵筆の描写が出てきます、文学や絵画の手法や見えないことを描きたかったとモネの作品作りのモチーフなどが語られのは分野は違っても同じ芸術家としての共感からなのでしょう。
原題はAdieu au Langage(言語にさようなら)、多くのセリフが語られますが内容が余りにも抽象的、言葉の限界をしこたま聞かせて映画こそ最高の芸術だと示したかったのでしょうかね。