「「ブラックスワン」×「レスラー」×作家性=」バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) どいたまさんの映画レビュー(感想・評価)
「ブラックスワン」×「レスラー」×作家性=
私はこの映画を鑑賞してまず最初に「D・アロノフスキー映画、特に『ブラック・スワン』と『レスラー』みたいだったな」と思いました。
まずこの映画のプロットを簡単に言うなら、いわば
「落ち目の役者で、問題を抱える一人娘の父である主人公が自らの超自己や自らと対になるライバルと闘いながら生きる意味とは何かを模索し、その果てに人生をかけた舞台に立つ」
という内容。まずこのプロットが
「一人娘を持つ落ち目の父親が自らと闘いながら生きる意味を模索。その果てに人生をかけた舞台に」という『レスラー』
「ある役者が自らの超自己やライバルと闘いながら生きる意味を模索。その果てに人生をかけた舞台に」という『ブラック・スワン』
この両作品と多くの点で重なる部分があります。
また、キャスティングに関しても「役者の実人生と掛け合わせた主人公の設定」という点で両者と重なります。
D・アロノフスキーは元々「レスラー」と「ブラックスワン」の2作品を1本の映画として描こうとしていたものを2本の作品に分けたと言います。
以上の理由からから私はD・アロノフスキーの遠い遺伝子を(あくまでも個人的な視聴後感として)この作品に感じざるを得ませんでした。
また、この映画のもう一つの魅力は監督や撮影監督、音楽などの製作陣個々人の強い「作家性」の融合体としての面です。
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督は独自の死生観とあらゆる時間と空間の融合と断片化という作家性を持ち
その断片を繋いでいくのが「ゼロ・グラビティ」での切れ目を感じさせないロングショットや「ツリー・オブ・ライフ」でのたおやかな光源遣いという独自の作家性をもつエマニュエル・ルベツキ
そこに刻む音楽はジャズとフュージョンという音楽ジャンルの中で作家性を磨き続けているアントニオ・サンチェスによって奏でられます
これらの融合の結果、辿り着いたもののジャンルがまさかの「コメディ」という、今まで観たことのない領域の作品に昇華されているのは間違いないです。
そのため、
「ブラックスワン」×「レスラー」×作家性=?
この方程式の解を見出すのにはまだまだ時間がかかりそうです。「答えなんて出せない」それが今の私の心境です。