「普通。以下でも以上でもない。」バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) 三遊亭大ピンチさんの映画レビュー(感想・評価)
普通。以下でも以上でもない。
「バードマン」見ました。
アカデミー作品賞他、全4部門受賞でしたか。かなり注目してたが、正直良い所と悪い所が相殺されている印象で、スッキリと見終える事が出来なかった。
この映画の特徴である終始の長回し風の映像は本当によく出来ていて感心したし、マイケルキートンの実人生さながらの体当たり演技も迫力満点だった。全編通して流れる、ちょっと抜けた感じのドラム音も、他の映画ではあまり見られない斬新なアイディアだと思う。エドワードノートン&マイケルキートン初顔合わせのリハーサル?の場面の絶妙な掛け合いも凄まじい程の完成度だった。まずそこで引き込まれ、迫力に圧倒されてしまった。
この映画の良いところは、マイケルキートンのキャラクター。過去の栄光と、現実の凋落に苦悩している姿は本当に痛い。レッテルなしでは批評できないと批評家を批判する場面があるが、彼自身が一番レッテルを気にしてるし、その批評家への罵詈雑言の全てが自分の事である。こいつ本当に痛い。爽快。
周りを固める脇役も光っていて、特にエドワードノートンのチャラいけど憎めない男は、キャラクターがしっかり作られていてマイケルキートンと対峙してもその存在感は薄れることはなかった。あと、ヒーロー映画で名声を掴んだロバートダウニーJr.やジェレミーレナーを軽く突いたり、批評家を痛烈に罵倒してみせたりと、ハリウッド近辺に対するアプローチも頷かされる。イニャリトゥ監督の「バベル」や「21g」は賛否が分かれる作品だと思うが、今作で否を賛に呼び込む快心の作品になったかもしれない。
アカデミー作品賞は納得だが、脚本賞を取ったのが少し疑問。ほんの少し、話に重厚さが足りない。あとは主人公の妄想シーンについても。例えば空を飛ぶシーンとかで、周りの通行人がそれに反応したりする。そんな馬鹿げた妄想にいちいち反応させた結果、妄想している場面と、現実の場面の境が曖昧にと言うか判りにくくなってる。謎のテレキネシスシーンもたくさん出てくるけど、これって本当に起きてる事?と思わざるを得ない。
演劇シーンも、エドワードノートンの身勝手な行動で散々な結果に終わったプレビュー公演に対して、ラストの本番公演が何故成功したのかという理屈が少し抜けている。理屈を省略して結果を見せる手法はたまにあるけど、少林サッカーですらしっかりやっていた部分だと思います。
ラストシーンの意味も分からない。空を飛んでいたのでしょうか?全然スッキリしない。
もうちょっとしっかりとした終わり方なら、個人的傑作評価になっていたと思う。