「まるで映画という水の中にいるような没入感と揺らぎ!最高かよ!」バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) cani tsuyoさんの映画レビュー(感想・評価)
まるで映画という水の中にいるような没入感と揺らぎ!最高かよ!
観る者の時間軸と空間軸を揺らがせる魔術的なワンカット。
マジックリアリズムの小説のようでグラグラきてしまうこの映像を見るだけでもこの映画を見る価値は十二分にある。
そしてストーリー。
かつてバードマンというヒーローで一躍スターになった主人公リーガンは『バードマンを演じていた過去の俳優』という世間評判と自身の俳優としてのプライドへの葛藤(バードマンだったイケイケの自分がことあるごとに囁く)を持っており、本来の自分を取り戻すために自身が主演、監督、脚本の演劇を企画する。
そのミュージカルに気鋭の演劇人マイクが参加することで徐々に自分の哀れな様を実感させられ、ペースが乱されていく。
『葛藤と本来の自身の獲得』の様を劇中劇で見せるのだが、鑑賞している我々は劇中劇を見せられることで彼の内面と劇という境界があらゆる曖昧になる。
その劇中劇だけでなく、リーガンの内面が現代社会とリンクしている。
マリファナを吸う娘を叱るリーガンに、娘はインターネットをほぼやらない(憎んでいるのか?)リーガンに対して、ネットの中での情報のストリームによりあらゆる人間が承認欲求に飢えている=自己アピールして必死に忘れられないようにしていることが、リーガンと同じだとを痛烈に批判。
そんなシーンが伏線でリーガンがとあるドジをすることでリーガンの動画が上がりYOUTUBEに上がり、かなりの再生回数を得ることで忘れられていたリーガンという存在が人々のから思い出される。
もう何から何までリーガンの内面と相関しているようなこのストーリーには本当に感服させられる。
そして物語を不気味に鼓舞する凶暴なドラムス。
ワンカットのこの映画を冗長的にしないのはこの不気味なジャズドラムのソロによる力が強い。
個人的にはこのドラムに映画という管楽器や弦楽器が乗ってジャズのライブを観ているようだった。
そしてカタルシス溢れるクライマックス!
劇の最後はユーモアと幻想を孕みつつ、リーガンの内面の葛藤を全て表しているようであった。
映画というメディアを見ていて久しぶりに陶酔する感覚!
もう感想がちゃんとしていないのだが、それくらい感動しているんです!
今年観た映画で暫定1位!